「根が明るくみんなに好かれていた」

そして研修会でも一目置かれる存在になっていく。

「将棋の序盤中盤は大したことがなくても終盤にめちゃくちゃ強い棋士でしたから、10代のうちにプロにはなれるだろうという共通認識もありました。
ただ、こんなに早く八冠という偉業に手が届く存在になるなんて、私も当時の生徒たちも誰も予想してなかったと思いますよ。
それと研修会時代は根が明るくて、みんなに好かれていましたね」(竹内氏)

八冠を成し遂げたが、現在は竜王タイトル防衛の七番勝負の最中にいる藤井八冠。挑戦者の伊藤匠七段は同学年だが、藤井八冠は2012年1月、小学3年生のときに出場した全国小学生将棋大会で伊藤七段に負けた際も大泣きしている。
以来、伊藤七段は「藤井を泣かせた男」と呼ばれるようになった。

棋譜を勉強する高校時代の藤井聡太八冠(共同通信社より)
棋譜を勉強する高校時代の藤井聡太八冠(共同通信社より)
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そんな藤井八冠の成長の助けにはAIの導入がもっとも大きかったという。それまでは過去の棋譜から打ち方を学ぶため、まず玉を守るという打ち方が染みつきやすかった。だがAIはそれを全否定し、「玉を守る暇があればすぐ攻めろ」という結論を導き出した。
藤井八冠は若くて頭の柔らかいうちから、AIを取り入れたことで、加速度的に棋力を上げていったのだ。

「私は20年間、東海研修会に務めましたが、いろいろな指導にトライし続けた結果、勝つことを求めすぎたり押しつけるような指導はやめて、対局中は真剣にやらせるけど他の時間は口を出さないという方針をきめました。
この指導法が一番と気づいたタイミングで藤井先生が入会してきました。彼が活躍してくれるたびに、自分の指導に自信が持てることが何よりうれしいです」(竹内氏)

最終回は将棋以外の場で見せる藤井八冠の一面に迫る。

#3につづく

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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