小学生で詰将棋を作成し、他の研修会員へ出題
研修会時代は月に2回、朝9時から夕方6時までみっちりと指導を受けた。しかし、驚くことに、当時の藤井八冠はさほど目立つ存在ではなかったという。
「入会時のテストは8戦3勝5敗。そのうちの1戦はプロ相手でしたが、4枚落ちでも勝てなかった。1年生で研修会に入ったのは立派ですけど、まだまだ目立った存在というわけでもなく、はっきりとプロを目指している感じでもありませんでした。
詰将棋に関してはすごかったけど、指し将棋ではまだまだひよっ子でした」(竹内氏)
ただし、非凡なものもすでに持ち合わせていた。藤井八冠は低学年ながら、よく自分で詰将棋を作り、他の研修会員に出題していたのだ。
「詰将棋をつくるのはある種特殊な技術で、よっぽどオタクじみていないとできない芸当だから、かなり珍しいですよ。
その問題が解けないで悩んでいる人を見るとニコニコする(笑)。解かれると残念がり、もっと難しいのを作ろうとしていたのをよく覚えています」(竹内氏)
今では年齢以上に冷静沈着に見える藤井八冠だが、当時は感情が抑えられないことがよくあったという。
「小学校低学年のときはふだんから対局に負けると、将棋盤を掴んでワーッと泣きわめいたり、癇癪を起こすタイプでした。いつまでも声を出すので、他の対局者の邪魔になる。それで僕が教室の端に連れて行くのです」(竹内氏)
しかし、精神面でもこの研修会で大きく成長する。
「4年生になるころには、負けた理由が自分で理解できるようになり、それにともなって感情もコントロールできるようになりました。
初めて藤井先生が癇癪ではなく、悔しさを噛み締めて静かに泣いているのを見たのはそのころの大会ですかね」(竹内氏)