子ども食堂は他の子どもたちを助けるアンテナ
安冨 市民活動はむしろ社会の最前線なんですよ。その最前線の市民活動を役所が支える。私もそれが理想だと思う。
泉 まったくそのとおりです。明石ではもう50か所を超えるこども食堂に頑張っていただいていますが、子ども食堂は食べにくる子どもたちのためだけでなく、その地域の情報を集めるうえで大変重要な役割を果たしているんです。あの子、大丈夫かな、最近顔を見せないけどどうしてるかなという子どもの情報を行政がもらうんです。
そういう子どものところには児童相談所が訪問し、ご飯を食べてなかったら明石市が晩ご飯を届ける。つまり子ども食堂は気づきのきっかけなんです。こども食堂のアンテナで得られた情報の、一番リスクの高いところや手間暇かかるところは公がやる。しんどいところは行政がする、その手前のところを一緒にやりましょうというのが、明石市の特徴だと思います。
安冨 それが先ほどからおっしゃっている、全体性を持って特に弱い人に注目するということによって、弱くない人も助かる、包摂される社会の仕組みですね。
泉 たった一人の子どもと言うけど、その一人の子どもを見捨てないし、放置しない。これは徹底してやってきました。例えばたった一人の子どもの顔を見るために、それこそ生まれる前から妊婦さんと1時間面談をし、中の子どもと面談するつもり話をして、しゃべった後にタクシーチケット5000円をお渡ししている。それでも、逃げて帰るような人は家庭訪問をして、マン・ツー・マンで相談に乗る。
その後健診に来なければ、児童手当の銀行振込を止めて、ちゃんと子どもに会えて初めてお金を支給するというルールにしています。さらにゼロ歳児は一番死亡のリスクが高いので、おむつの宅配の形で、研修を受けた子育て経験のある方が毎月訪問して、チェーンロックを開けてもらって面談をする。そこは、たった一人の子どもも悲しませないという根っこのところにすべてつながっています。