多数者ばかりに配慮する政治からの脱却
安冨 弱い人、痛めつけられている人たちが、痛みから逃れられるようにしようと配慮したら社会全体の構造が変わると、そこが一番重要なのですね。
泉 そこだと思います。日本の政治は多数者ばかりに配慮して、どんどん少数者が増えていく構造になっています。最初多数の9割がセーフでも1割がアウトになる。次のテーマで9割セーフだけど、また1割がアウトで、どんどん多数派に入れない少数者が増えていく。
だから多数派ばかりに向いた政策をすると、少数派の孤立化や疎外感を招き、多数派はそれを自己責任と切り捨てる。これでは市民の安心がどんどん減っていく。でも、少数者に向けた政策をやっていくと、安心が増えていく感じになりますから、そこは相当違うと思いますね。
安冨 包摂されていくということですよね。
泉 はい。その少数派施策は、地域特性をよく見て、ボランティア、市民と一緒にやっていかないと実現できません。自助、共助、公助と言うときに、当然私は自助派ではありませんが、公助で全部できない以上、共助、まさに地域や市民団体の力が必要で、そこをただお任せするんじゃなく、場所の確保や最低限の実費は公費負担しますよと、多くの仲間と一緒にまちづくりができるように公助している。共助を公助する。その連携が明石を強くした部分だと思います。
安冨 ボランティア団体に対して冷たい行政が多いですね。何を余計なことをしてくれているんだという態度。お金を出すときは、ちゃんと役所の言うことを聞いてくださいと言って、少しでもやり方が違うと、お金を引き揚げる。そうやって監査を入れて縛るというような習性がありますね。
泉 市民と向き合っているのか、市民を信頼しているのかの違いでしょう。私は人口の30万人と一緒に明石のまちをつくっていると真面目に思っています。ただ、公務員は税金で養われていますから、ボランティアや市民の皆さん以上に責任感を持つべきだと思っています。責任は民間が負うんじゃなくて、行政が負うと。
民間の方は、その気持ちで子どもやお年寄りに寄り添う、それで十分。こども食堂で何かトラブルが生じたときの責任は行政が負う。それを民間に負わそうとするから広がらないんです。その覚悟がある行政があることが、明石の市民活動が盛んな理由だと思います。