映画が昔より「つまらなく」なっている?

80年代にも90年代にも、長い映画は興収上位作の中にもあった。ただ80年代のある一時期、ある種の作品を映画の原体験とした、あるいはTV放送で映画に親しんだ世代が、ここ最近とくに長尺化したハリウッドの実写娯楽大作に触れたとき、「昔より長くなった!」と感じるのかもしれない。

たとえば『ハリー・ポッター』『ワイルド・スピード』『007』『ミッション・インポッシブル』などのフランチャイズ超大作シリーズ、あるいはマーベル・シネマティック・ユニバースに代表される一連のアメコミ映画など。たしかに、これらの上映時間は近年軒並み長めだ。

逆に言えば、一部の映画好きアラフィフ以上のような映画原体験を経ていない人は、冒頭の大学生と同じく「長くなった」ことにピンと来ない。しかも大学生たちは旧作の多くをノーカットの配信で観るので、「昔も長かったよね?」となる。

ところで、ある大学生が興味深いことを口にしていたので、最後に紹介しておこう。

「完全に推測ですけど、その人たちにとって映画が昔よりつまらなくなってるんじゃないですか? つまらないと長く感じますよね」

「つまらなくなっている」とは、作られる映画に駄作が増えたということなのか。あるいは、鑑賞者の感性が加齢によって鈍ったということなのか。御年49歳の中年として、思わず胸に手を当てて考えてしまった。



文/稲田豊史