TVサイズに編集された映画番組の影響?
また、当時の小中学生の「洋画鑑賞の入り口」として機能したタイプの洋画ヒット作も、短めのものが多い。一例として、『少林寺』(1982)は1時間40分、『ゴーストバスターズ』(1985)は1時間45分、『ネバーエンディング・ストーリー』(1985)は1時間35分、『ビバリーヒルズ・コップ』(1985)は1時間45分だ。
さらに、80年代は若手女優を主演に据えた2本立て角川映画が、興収上位にたびたびランクインしている。『ねらわれた学園』(1981)が1時間31分、『時をかける少女』(1983)が1時間44分、『メイン・テーマ』(1984)が1時間41分、『愛情物語』(1984)が1時間40分、『Wの悲劇』(1985)が1時間48分、『天国にいちばん近い島』(1985)が1時間42分だ。これらはジャッキー&スタローン好きの子供たちより、もう少しだけ年上の映画少年に愛された。
乱暴であることを承知で、こんな仮説を立ててみる。
80年代に映画をよく観ていた少年(=現在のアラフィフ以上)にとって、子供向けファミリーアニメ以外で初めて触れた「映画」には、比較的短め(100分前後)の上映時間のものが多かった。そのため、彼らの中に「映画の長さ=100分前後」という“常識”が無意識のうちに刻まれたのではないか?
実際、筆者にとっても、ジャッキー映画やスタローン映画などは「初めて子供たちだけで映画館に行って観た、本格的な字幕付きの洋画」である。
また、これは男女問わずだが、現在4、50代以上の世代が幼少期のころは、地上波のゴールデンタイムで今よりずっと多く、今よりずっと新旧洋邦多様な映画が放送されていた。80年代まではビデオデッキもあまり普及しておらず、TVは一家に1台が普通の時代。午後9時から親が居間で観る映画をリアルタイムでなんとなく一緒に観ていた子供たちは、今よりずっと多かっただろう。筆者も小学生時分、父親に付き合って古い『007』シリーズや海外の戦争映画、濡れ場のある大人向けの日本映画などをよく観ていた。
その際、(現在でもそうだが)放送される映画の多くは短く編集されている。通常の映画放送枠は1時間50数分。CM分を引くとさらに短い。つまりTVで映画を浴びるように観ていた当時の子供たちにとって“映画の標準的な長さ”は、「CM込みでも110分以内」であり、本編だけならもっと短かかったのだ。
彼らは大人になった今でも「基本的に映画は2時間以内に終わるもの」という感覚が、うっすら残っているのではないか? 少なくとも筆者は残っている。午後9時から始まった映画は、10時半を過ぎたあたりで判を押したように「そろそろクライマックスに突入」。これが体内時計に深く刻まれている。