シュート4本対24本、それでも負けない戦い方
ビジャレアルが森保ジャパンと決定的に違うのは、やはり効率に特化した点だ。エメリ監督の守りは、人海戦術ではない。できる限りゴールから離れた位置でブロックを自在に動かし、ボールをつなげる相手のミスを誘発。予備動作における「ポジション的優位」活用することで、有利に戦う。
それは攻撃にも当てはまる。
バイエルン戦のファーストレグ、前半7分の先制点は象徴的だった。スペイン代表FWジェラール・モレーノが右サイドに張り出し、幅を取る。広げたインサイドを駆け上がったアルゼンチン代表MFジョバンニ・ロ・チェルソがゴールラインぎりぎりまで深みを取り、マイナス方向へ折り返し、エリア内のスペイン代表MFダニエル・パレホが合わせ、さらにオランダ代表アルノー・ダンジュマがコースを変えて先制した。
陣地の奪い方がロジカルで、一つの得点パターンだった。
合理性の点で、カウンターは敵を一閃する切れ味がある。奪った瞬間、爆発的なスピードとパワーを武器に阿吽の呼吸で飛び出す。その練度も高い。
その点が強く出たのがバイエルン戦のセカンドレグだ。ビジャレアルは24本ものシュートを浴び、自分たちのシュートは4本、枠内はわずか一本だった。圧倒的に不利な試合展開で1点を返され、振り出しに戻されたが、終盤に発動したカウンターでゴールを決めた。
バイエルンのクロスを跳ね返し、回収したボールをパレホが卓越したコントロールで相手のマークをはがす。これで一気に優位に立った。前向きでボールをつなげると、一斉に選手が走り出した。最後は逆サイドからトップスピードで走り込んだ交代出場、ナイジェリア代表FWサムエル・チェクウェゼが押し込んだ。
「ワンプレーで相手を外せたら、それがゴールにつながる」
その腹のくくり方で、一切の無駄のなさだった。森保ジャパンはどこに向かって舵を切るべきか。後編では、ビジャレアルの準決勝リバプール戦を検証し、その核心に迫りたい。
取材・文/小宮良之 写真/gettyimages