まるで「ラジコン感覚」で雑草対策

「ミズニゴール」は、水田を走らせて水を濁らせ、雑草を生えにくくさせる装置だ。水が濁るから、ミズニゴール。ド直球だが、親しみの湧くネーミングだ。

ミズニゴールは少し大きめの三輪車くらいのサイズで、ラジコンのコントローラで操作する。車輪についた凹凸で泥層をかき混ぜ、水を濁らせる。これによって雑草の光合成を阻害し、草を生えにくくさせる。

日本農業の「構造的問題」にロボティクスのチカラで挑戦。農家の重労働を削減するスマートデバイス「ミズニゴール」とは?_1
水田除草ロボット「ミズニゴール」。水田の泥層をかき混ぜ、水を濁らせることで雑草の成長を抑制する
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「水を濁らせることで雑草を生えにくくする農法は、以前からありました。田んぼの中でチェーンを引きずって歩くという方法があるのですが、『それなら人間が歩かなくてもいいのでは?』と思ってつくったのが、ミズニゴールです」

同製品を開発するハタケホットケの代表取締役・日吉有為さんは、製品誕生の経緯を振り返る。

日本農業の「構造的問題」にロボティクスのチカラで挑戦。農家の重労働を削減するスマートデバイス「ミズニゴール」とは?_1
株式会社ハタケホットケの代表取締役・日吉有為さん(写真中央右)。メンバーであるケンジ・ホフマンさん(写真右)をはじめ、4人のメンバーでハタケホットケを創業した

従来の方法だと、50mプールほどの水田(1反)を濁らせるのに2時間程度かかる。しかし、同製品を使えばその6分の1にあたる20分程度で完了するという。また、車輪と車輪の間に据えられたブラシによって、泥層についた雑草の芽を取り除く効果もある。

同製品は、田植えが終わった後から40日までを目安に使用する。状況にもよるが、3日から5日ごとに稼働させれば十分な効果が出るそうだ。40日を過ぎると稲が成長し、雑草に負けないようになる。

日本農業の「構造的問題」にロボティクスのチカラで挑戦。農家の重労働を削減するスマートデバイス「ミズニゴール」とは?_1
日本農業の「構造的問題」にロボティクスのチカラで挑戦。農家の重労働を削減するスマートデバイス「ミズニゴール」とは?_1
通常は1反(1000平米)を人力で濁らせるのに、少なくとも2時間程かかる。一方、「ミズニゴール」では1反あたり20分前後で完了できる設計だ

水田を濁らせるための方法としては、合鴨を水田に放す合鴨農法もある。合鴨なら勝手に動いてくれるので手間がかからないと思いきや、意外にもけっこうな労力がかかるという。

「合鴨が逃げたり、野生動物に雛を食べられたりしないように、田んぼの周りを柵で囲みます。また、カラスも雛を食べてしまうので、50cm間隔の細かさになるよう田んぼの上にテグスを取り付けます。これがけっこう大変なんです」

その点、同製品は3〜5日ごとに操作を行う必要はあるが、ラジコン感覚で楽しみながら作業できる。2022年から実証実験を開始しているが、参加した農家の評価も上々だ。労力が減ったうえ、十分な効果を実感しているという。

ただ、この話は、単に「農家の負担が減った」というだけの話ではない。この製品が日本の農業のあり方を変えるかもしれない、という大きな広がりを持った話なのだ。