K-POPでは普通にできることが、日本ではできない
サブスクリプション興隆時代の今、特にヒップホップのアーティストでいえば、個人で楽曲を作ってTuneCore(デジタル音楽配信の委託を行うサービス)などを通してストリーミング視聴に提供することで、普通に食べていけるし、むしろライブをするにしても中間マージンが不要なぶん、ある程度の多い売り上げが得られる。インターネットやSNS、ストリーミングサービスなどの発達によって、シンプルなシステムで活動しやすい環境になっていました。
ただ、19年頃、自分自身がある程度のキャリアを積んできたときに、自分のもとに多くの相談が寄せられるようになり、その相談内容が、自分が10代や20代前半の頃に抱えていた悩みとさほど変わらなかったんです。やりたいことがあるけれども、例えば世界、特にK-POPでは普通にできることなのに、その土壌が日本にない。種はあるけれども、その種をまく畑がない、どこに植えていいか分からないわけです。
自分の見た例で言うと、例えばラップで活動するにあたりアンダーグラウンドのヒップホップとの接点が増えるのは必然ですが、そういったアンダーグラウンドたたき上げの出身でありながら、もっと広い意味での音楽シーンや、時に芸能にもコミットしていきたい、と今までとは違う一歩を踏み出したときに、ただそれだけで手ひどくいじめられる人もいます。
それはごく一部の人がすることだから気にするな、と言う人もいるかもしれませんが、まだ若く、活動を始めたばかりの本人からしたら、それまで応援してくれた人からの手のひら返しはやっぱりすごく怖く感じると思います。
また、ダンス&ボーカルを志向している人にとっては、その出口は日本の芸能事務所に多くありません。もちろん素敵なダンス&ボーカルは大手芸能事務所から世に出ていますが、スタイルとかカラーも固まったものが多いと感じます。歌ったり踊ったりという活動を通して自分のアーティスト性を突き詰めたり、もしくはラップをしながら、自分がやりたいことを自分のままで活動できる土壌がないという方が非常に多いわけです。
それがすごく孤独感や閉塞感として高まることは自分も身を持って知っていたので「俺がやらなくちゃいけないやつだ」と。もともと持っていた起業精神とそれが点と点でつながったというか。やりたいことやるべきことがつながったのが19年頃でした。