まだ、何の「決着」もついていない
事件当日は本来のバスの運転手が休んだ関係で、園長が代わりにバスを運転していたというが、『病院に行く予定があり急いでいた』ことを理由に車内の確認を怠ったと語っている。
また、それだけでなく担任は千奈ちゃんが欠席ではないことをホワイトボードで確認したうえで、千奈ちゃんの姿が見当たらなかったにもかかわらず、確認を両親に行わなかったことなど、にわかには信じがたいミスが発覚している。
「バスの中で千奈は上の服を脱ぎ、麦茶が入っていた水筒は空になった状態だったそうです。その日、バスに乗っていた園児は6人です。降りる前に30秒もあればバスの車内は確認できます。
それに千奈が登園していないとわかっていたのになぜ連絡をくれなかったのか。姿が見えなかったなら探してほしかった。ただそれだけでこんなことは起きてないはずなんです。
いまでも僕と妻は千奈のいる世界に行きたいとたびたび話します。これまでは死後の世界とか信じてはいなかったのですが、そう思ってしまいます。
次女の存在が僕らを踏み止まらせてくれていますが、それでもどちらかひとりが千奈のもとにいかないと千奈はずっとひとりなんじゃないかと話したりしています。毎日苦しいなか、生活しています。
けど、まだ何の『決着』もついていません。そういったことは『決着』がついてからもう一度考えようと思っています。
死ぬことは……、まあ、正直やろうと思えば今日でもできる」
事件直後、園側は遺族に「廃園にする」と約束し、念書も交わし、「在園児がいるまでは続ける」と説明をしていたが、2023年度も新入園児を受け入れるなど廃園にする様子はない。責任をとろうとしない園側に遺族は深い憤りを感じているという。
河本さんにとっての『決着』とは何か尋ねるとこう答えた。
「川崎幼稚園の運営は榛原学園が行っていますが、バスを運転していた増田立義元園長は榛原学園の元理事長です。
事件後辞任しましたが、新たに榛原学園の理事長に就任したのは増田立義元園長の息子です。結局、一族経営のままなんです。
僕は一族経営を辞めさせること、そして川崎幼稚園を廃園にするか、他法人に引き渡すことを『決着』と考えています」
#2では事件後の1年のあいだ、河本さんがどのような思いで園側と向き合ってきたかを語ってもらった。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班