増田元園長の無責任な対応
「千奈ちゃんはそんなことを望んでいないってこともよく言われます。自分の行動が正しいかどうかもわかりません。ですが、僕は千奈の命を奪ったずさんな管理をしていた経営母体である榛原学園が、今後も幼稚園の運営に携わるべきではないと考えています」
河本千奈ちゃんの父親は決意を滲ませた静かな口調で現状に対する思いを切り出した。
事件後、月に1度、川崎幼稚園を運営する榛原学園の関係者たちと面談を重ねてきたが、送迎バスを運転していた増田立義元園長をはじめとする園側がとった態度は「誠意ある対応」とはほど遠かったという。
「事件当日に増田元園長たちとお話したときには、車内の確認や出欠の確認を怠った理由を『(送迎後に)病院に行く用事があって急いでた』『無断欠席だと思い込んでいた』と言っていました。
僕はそもそも園児の所在確認のマニュアルや体制はどうなっていたのか?と尋ねたのですが、増田元園長は『言えない、言えない。(警察に提出しているから)わからない。見てないから』などとどこか無責任な様子でした。
思わず『ふざけんなよっ』と声を荒げる場面もありました」
遺族側の要望として、川崎幼稚園について「廃園にする」という念書を交わしたときのことについて、河本さんはこう振り返った。
「事件から1日たって司法解剖から千奈は帰ってきました。体のいろいろなところに大きな絆創膏が貼られて切った跡を隠してあり、半分開いていた目も綺麗に閉じられていました。
司法解剖の前に警察に千奈ちゃんの帽子を用意してくださいと言われていたのですが、その理由もわかりました。頭をあけて脳を見たので、その跡を隠すために千奈は帽子を被っていました。
その日、千奈を前に増田元園長を含めた関係者9人と話し合いをしました。この前の話し合いから僕たちは廃園を望んでいることを伝えていました。その上で『千奈を見てあなたたちどう思いますか? 千奈の顔を見て思うことを(ノートに)書いて下さい。書きたくないなら何も書かず帰ってくれてかまわないです』と僕は言いました。
担任とか副担任の方や乗務員の方などは涙を流して千奈を見ていましたが、あろうことか増田元園長は怖い物や汚い物でも触るように、千奈の肩を僕らに許可なく触ったんです」