役人は基本的に自信がない
泉 本当に、何でも自治体任せで今の政治家も官僚も何もしませんね。今、明石市はいい流れを作りつつあるので、この勢いのまま、全国の自治体をはじめ、国を動かすところまで持っていきたいと考えているんですよ。
藻谷 役人が何にもできないという話、先ほどの「児童手当を離婚した父親に振り込む」という話でよくわかりますよ。僕らは公立校の出身ですけど、中高一貫から「いい大学」に入った彼らと話してみると、普通に貧しい人に知り合いがほとんどない。男子校出身なので、ジェンダー問題も実感としてまったくわかっていない。
泉 育った環境が良すぎて、世の中の貧しさが分からない。塾も行けない、本もなかなか買えないような家庭が分からないんですよ。だから、本人の努力不足、自己責任で整理しちゃうわけですが、努力以上にあんたの環境が恵まれていたんだよと言っても、みんなぴんとこないんですよね。
藻谷 逆に、ある程度頭がいいために自分で分かる人もいますよ。「自分は親がたまたま裕福だった、だから塾にも行けて、中高一貫入って東大に入れた」と自覚している。すると表面はともかく、内心ではすごく自信のない人間になる。そしてたまたまのラッキーで本当は実力がないと自覚するほど、さらにもって学歴差別や貧富の差を、何とか正当化して自己防衛しようとする。役人にはそういう人が多いですよ。
泉 同じ人種がある意味、ずっとその価値判断で上がっていくので象徴的なのは財務省の主計局ですよ。あとはみんなコンプレックス持っていて、そこが枝分かれしていく。中央省庁の厚労省に行ったりすると財務省に頭上がらない。マスコミに行った人間は、批判精神旺盛に見えて、やはりどこか財務省に頭が上がらん癖があって批判できない。学者もそうです。
藻谷 彼らは本当の自信がないんですよ。だから財務省程度にへこへこする。自信があって軸があれば、泉さんのように渡り合えるはずです。
随分前の話ですが、日本政策投資銀行で仕事をしていた頃に、神戸の中小企業のおっちゃんたちとプロジェクトを進める機会があったんです。その中に目に見えて物すごく頭のいい人がいた。とにかくもう話の理解が早いわけです。「この人は俺が人生で話した人間の中で、頭の回転の速さではトップスリーに入る人や」と思ったんですが、彼の学歴は中卒でした。ばかばかしくなって高校を中退して働き始めちゃったんですね。「学歴って頭のよさには関係ねえな」と改めて思いましたね。