東京は世界的にみても人が多すぎ―大都市圏の拡大と人口増加

都市の規模を比較する際、中心となる都市の行政区の人口を数えるのではなく、通勤や通学など、緊密な関係にある周辺の市町村と合わせた「都市圏」で比較することがあります。

東京を例に取ってみると、東京の23特別区の人口は964万人(2021年)ですが、東京都の1396万人に千葉・神奈川・埼玉県の人口をあわせた大都市圏人口は約3200万人になります。世界各国の大都市圏人口は、国際連合の経済社会局が毎年統計を公表しています。

図表6-1は、1990年の世界の主な大都市圏(人口500万人以上)と、上位10都市のリストです。人口が500万人を超える大都市圏は、1990年の時点では全部で31ありました。トップは東京(首都圏)で、2位が大阪(近畿大都市圏)、3位がニューヨークでした。東京が唯一3000万人を超えている以外は、どの大都市圏も人口が1000万人台です。

「国際的に見てあまりに人口が多すぎる」東京。移民が普通の社会はやってくるのか…世界ランキングマップ_4
図6-1 世界の主な大都市圏(人口500万人以上)(1990年)。『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』より

図表6-2は、2018年のデータです。トップは東京(首都圏)で変わりませんが、2位以下の都市の多くが発展途上国の首都あるいは経済の中心都市になっています。人口が500万人を超える大都市圏は、世界全体で81にまで増えました。このうち33都市圏が、人口1000万人を超えています。

発展途上国における都市や都市圏の急速な拡大の背景には、農村部での人口増加と、都市と農村の生活水準の格差があります。爆発的な人口増加に対して食糧の生産や土地の分配が追いつかない農村部では、多くの人々が出稼ぎや移住先として大都市を目指します。

多くの発展途上国では、植民地時代からインフラ整備のための資源を首都や中心都市に集中的に配分する政策をとってきたため、一つの都市が際立って大きい(二番手以降の都市を大きく引き離す)「プライメイトシティー」と呼ばれる現象が起きています。農村部からの出稼ぎ者は、時には最低限の住環境も整っていないスラム(不良住宅街)に住まざるを得ません。

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図6-2 世界の主な大都市圏(人口500万人以上)(2018年)。『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』より

ごく限られた巨大都市への一極集中を避け、大都市を分散させる政策をとる国も見られます。図表6-3は、世界各国の人口100万人以上の都市圏の数を1990年と2018年で比較した資料です。

1979年に「改革開放政策」を始め、沿岸部に外資を誘致するための経済特区や経済開発区と呼ばれる都市を次々に誕生させた中国は、内陸部との格差の是正を目指して2001年から15年計画で「西部大開発」プロジェクトを手がけてきました。

油田や天然ガス田、水力発電所の開発や、鉄道網の整備などを通じて多くの地方都市で人口が増加しました。中国以外のBRICsといわれる国々でも都市圏の拡大が著しくなっています。一方で、ヨーロッパや日本は、これらの地域に比べると巨大都市圏の増加は緩やかです(フランス1→4、ドイツ1→4、イギリス1→5、イタリア2→4、日本4→8)。

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図6-3 人口100万人以上の大都市圏数(1990/2018年)。『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』より

都市の巨大化と分散拡大化に伴って様々な問題が発生することが予想されます。都市問題はもとより、環境問題や食糧安全保障など、当該の国だけでは対処しきれない問題は隣国に波及します。人口問題とあわせて、各国の動向に注意を払っていきたい課題です。