200人近いアメリカ人記者に囲まれて…
翌日夜。記憶はあいまいだけれど、試写開始はおそらく午後11時とか、とんでもない時間。とはいえ、ブロードウェイのミュージカルを見るためニューヨークにいる私が引き受けたのだから、それより前ではあり得ない。手元には招待状もなにもなしのまま、指定場所に行ったのだった。
場所はリンカン・センターのオーディトリアム。リンカン・センターにはメトロポリタン・オペラとかアリスタリー・ホールのコンサートに行ったことはあるけれど、ここは初めて。立派な視聴覚室に、100人超え、もしかしたら200人近いマスコミ関係者が集まっている。ほとんどノーチェックに近いほどスムーズに入場できた私も、そのなかのひとり。
試写が始まる。スクリーンに、おなじみのパラマウントの山が映り、そのままカメラは常夏の某王国に着地。ここから始まる愉しいコメディについては、言わずもがなだろう。見たことない人はDVDでも配信ででもぜひチェックを。そうそう、30年ぶりの続編もすでに配信に登場しているのだった。
試写が終わって、しばらくした後、ついにエディ・マーフィと共演のアーセニア・ホールが登場。ふたりともジョルジオ・アルマーニのスーツでキメて、すごく洗練された印象。登壇したマーフィの第一声は「そこのキミ、レイカーズのファンなの? 僕も大ファンなんだよ」というもの。記者のひとりのLakersロゴTシャツに目を止めたらしい。これで一気に場がなごむ。やっぱり話術に長けているのだなあと感心してしまった。
とはいうものも、こちらのドキドキは止まらない。なにしろ、映画で見るエディ・マーフィは『ビバリーヒルズ・コップ』2作は言うに及ばず、『48時間』(1982)でも『大逆転』(1984)でも、ものすごいマシンガントーク。あんなふうに話されたら絶対聞き取れない、と心配していたのだ。ところが、マーフィもホールも、極めて折り目正しい言葉遣いで語り口も丁寧で、一気にホッ。
そんなわけで、ニューヨーク深夜の“ミッション・インポッシブル”は、なんとか完遂したのだった。会見の中身は、ここではカット。気になる方、「ロードショー」のバックナンバーを漁ってみてくださいね。
『星の王子ニューヨークへ行く』(1988) Coming to America 上映時間:1時間57分/アメリカ
写真:Collection Christophel/アフロ
監督:ジョン・ランディス/脚本:エディ・マーフィ、デヴィッド・シェフィールド、バリー・ブロースタイン
出演:エディ・マーフィ、アーセニオ・ホール ほか
理想の花嫁を探すため、身分を隠してニューヨークへやってきたアフリカの某国王子と親友が騒ぎを巻き起こすコメディ映画。エディ・マーフィ映画ならではの特殊メイクによる4役兼任も楽しい。昨年は30年以上ぶりに、王となった主人公を描く続編が製作された(Amazon Prime Video配信中)。