脳がジャッジする「よい祈り」と「悪い祈り」
人間の脳には前頭前野内側部と呼ばれる部分があり、ここは自分の行動の評価を行っていて、祈りの内容についても脳はよしあしのジャッジを下しています。
自分のことだけを考えた祈りよりも、自分以外のだれかの幸福も願った祈りのほうが「よい祈りだ!」と脳が判断するのはいうまでもありません。
「だれかを蹴落としたい」「あの人に負けてほしい」などのネガティブな祈りは、もちろん「悪い祈り」として判断されます。
脳が「よい祈り」と判断すると、ベータエンドルフィンやドーパミン、オキシトシンなどの脳内快感物質(脳内で機能する神経伝達物質のうち、多幸感や快感をもたらす物質を一般的に総称した用語)が脳内に分泌されます。
なかでもベータエンドルフィンは、脳を活性化させる働きがあり、体の免疫力を高めてさまざまな病気を予防します。さらに、ベータエンドルフィンが分泌されると、記憶力が高まり、集中力が増すことも知られています。
また、オキシトシンにも記憶力を高める作用があるといわれています。
ちなみに、脳が「悪い祈り」と判断した場合には、ストレス物質であるコルチゾールという物質が分泌されます。コルチゾールは生体に必須のホルモンですが、脳内で過剰に分泌されると、脳の「記憶」の回路で中心的な役割を担う「海馬」という部位が萎 縮してしまうことがわかっています。
このように、「よい祈り」は心と体の健康にプラスに働き、「悪い祈り」はマイナスに働くのです。
といっても、あまり強引に他人のしあわせを考えるのはおすすめできません。
前頭前野内側部は、をわりとシビアに見抜くのです。心から思ってはいないことを祈りに付け足しても、脳は「それは偽善でしょう?」と判断し、ポジティブな祈りとはなりません。
そこでけっして無理はせず、自分以外のだれかのしあわせも考えて祈る。それが心と体にプラスに働き、ひいては願いを叶えやすくする、ともいえます。
文/中野信子 写真/shutterstock