すべては遺伝子のせい?!#2
すべては遺伝子のせい?!#3

新しいものが大好きな「開拓遺伝子」

「あの人には才能があるから成功するよ」とか、「私には才能がないからダメだ」とか、日頃よく耳にしますね。才能は、あるか・ないか、で語られることの多い言葉です。それを決めているのは、遺伝子なのでしょうか?

ここでは、おもに才能に関係するとされる遺伝子を紹介していきます。

この先「○○遺伝子」という言葉がよく出てきます。たとえば「○○の働きを持つ酵素をつくり、コロナワクチンにも使用されているmRNAのもとになる遺伝子」と書くほうが科学的で正確でも、わかりやすく象徴的な言葉で「○○遺伝子」とします。

ヒトの脳は、一言でいうと神経細胞のかたまりです。1000億といった膨大な数の神経細胞(ニューロン)がシナプスと呼ばれる部分を介して複雑につながり、巨大なネットワークをつくっています。シナプスでは「神経伝達物質」が受け渡されて情報が伝わります。シナプスの数は150兆、あるいはもっと多いともいわれます。
脳内には、「脳由来神経栄養因子」(BDNF= Brain-derived neurotrophic factor)と呼ばれるタンパク質があります。これは神経細胞に働いて、その生存や活動を支えたり、成長を促したりしています。いま、世界の科学者たちが注目し、研究を進めているものです。
BDNFを生み出す遺伝子が存在すること、その「BDNF遺伝子」にいくつかのタイプがあることもわかっています。このうち知性や知的好奇心と関係があり、新しい経験を受け入れることに寛容なタイプの遺伝子に「開拓遺伝子」というのがあります。

開拓には、誰も足を踏み入れたことのない荒野を切り開く、力強いイメージがあります。そんな大それたことでなくても、近くに新しい店がオープンしたから開拓しよう、なんていう場合にも使われますよね。カフェでも、お寿司屋さんでも、美容室でもいいんです。

開拓の傾向が強い人は、新しいことにさかんに興味を示す、知的好奇心の強い人です。それを実行に移す行動力も必要でしょう。実際オープンした店に行かなければ、開拓したとはいえませんね。さらに、世の中のふつうの考え方にとらわれず独創的な発想をし、芸術的な創造性を発揮することも少なからずあります。

ピカソの強烈な絵を思い出してください。彼は荒唐無稽とも思える人物像を大量に残しました。
10代ころのデッサンを見ると早熟で、とにかくうまい。中学生だけど、このままで芸術大学に楽勝で合格だろう、というような絵を描きました。しかし、既存の美術界には魅力を感じず、古典に深く学び、生涯新しい道を開拓しつづけました。
彼は強い開拓遺伝子を持っていたのかもしれません。そんな人は極端な場合、夢想や空想が過ぎて無謀な行動をとることもあります。

開拓の傾向が弱い人は、なじんだものを好み、大きな変化を望まず、保守的で堅実な生活を送りがちです。先ほどの話でいえば、行きつけの店ばかりを好む人が当てはまりそうです。この傾向が極端に出ると、伝統や権威にこだわりすぎる頑迷な人ということになるかもしれません。

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