「怒羅権」は日本人の差別や偏見、
そして貧困が生み出した犯罪集団

もっとも、来日外国人を過度に警戒するのではなく、彼らを受け入れる多様性を、日本社会は諸外国に学び、実践する必要があります。技能実習生を受け入れる企業や施設の公序良俗意識が、政府や専門機関により涵養され、日本で学んだり働いたりする外国人が、犯罪などに走らなくてもよい環境作りに留意すべき必要があると思います。

たとえば、技能実習生受け入れ体制の劣悪さから逃亡し、不良外国人グループになったベトナム人の例が、次のように報道されています。

「群馬・栃木・茨城といった北関東一帯で、『ボドイ』と呼ばれる不良ベトナム人たちが近年、独自のコミュニティーを築きながらさまざまな犯罪行為に手を染めている。『ボドイ』はベトナム語で『兵士』を意味し、その多くは実習先を逃亡して在留資格を失った元技能実習生だ。(中略)日本では2017年頃から技能実習生の雇用環境の劣悪さや逃亡事件が注目されるようになったが、この問題の中心にいたのが、ベトナム人たちだった。(中略)ボドイたちにとって不法就労や無免許運転は当たり前で、違法な車両売買、賭博、拉致、家畜や果実の窃盗、薬物乱用、売春などのほか、時にはひき逃げ死亡事故や殺人事件すら起こす」(「集英社オンライン」2023年3月2日)。

いずれにせよ、日本は海で囲まれているから安心だという幻想は過去のものになりつつあります。平成の中期から末期に生まれた中国残留孤児二世、三世からなる半グレグループで準暴力団に位置づけられた「怒羅権」は、日本人の差別や偏見に加えて、貧困が生み出した犯罪集団です。

「怒羅権」は日本人の差別や偏見に加えて、貧困が生み出した犯罪集団。ネパール人の「東京ブラザーズ」にベトナム人の「ボドイ」…日本社会で育まれる外国人犯罪集団の実態_3
写真はイメージです
すべての画像を見る

当時は、ダイバーシティなどという概念はありませんでした。令和の時代に我が国の人々が、昭和や平成の時代と同じ過ちを繰り返し、他国の人たちを排斥することで、彼らに「カテゴリー5〔犯罪組織の分類を、既存のカテゴリーでは特定できないという意〕」の犯罪集団を形成させることがないよう、今を生きる日本人一人ひとりが心掛けたいものです。

闇バイトの実態と勧誘システム
詐欺電話をかける「ハコ」や「ルーム」のリアル
元愚連隊タタキ専門だった山田氏の証言

文/廣末登
写真/shutterstock

闇バイト 凶悪化する若者のリアル (祥伝社新書 683)
廣末 登
「怒羅権」は日本人の差別や偏見に加えて、貧困が生み出した犯罪集団。ネパール人の「東京ブラザーズ」にベトナム人の「ボドイ」…日本社会で育まれる外国人犯罪集団の実態_4
2023年7月3日
¥1,023
224ページ
ISBN:978-4396116835
「闇バイト」がなくならないワケとは?

二〇二三年一月一九日、東京都狛江市に住む九〇歳の女性が自宅で殺害されているのが見つかった。女性の遺体には激しい暴行の跡が見られ、これまでとは次元の違う強盗殺人事件として世間を震撼させた。
本件をきっかけに注目を集めたのが、「闇バイト」といわれる犯罪だ。指示役に集められた素性のバラバラな集団によって行なわれる犯罪で、同種の事件は後を絶たない。

中でも詐欺よりも手っ取り早く稼げる「タタキ(強盗)」の増加が危険視されている。本書では、非行経験のある犯罪学者が当事者たちを取材。

闇バイトを取り仕切る半グレや犯人の更生に従事した保護観察官の声から見えてくる、その真実とは。最終章では、闇バイトを生み出す日本社会の闇を分析。失うもののない「無敵の人」を生み続ける構造に警鐘を鳴らす
amazon