機能していない日本の雇用保険

日本の社会保障で劣っているのは、生活保護だけではない。

たとえば雇用保険である。

雇用保険というのは、解雇や倒産など、もしものときのピンチを救ってくれる保険である。この雇用保険が充実したものであれば、少々景気が悪くても、人々は生活にそれほど影響を受けないで済む。

しかし、日本の雇用保険は、ありていに言って「使えない」のである。支給額や支給期間が、硬直化しており、本当に苦しい人にとっては、役に立たないのだ。
 
まず、中高年の支給期間が非常に短い。

20年勤務した40代のサラリーマンが、会社の倒産で失職した場合、雇用保険の失業手当がもらえる期間は、わずか9ヵ月である。いまの不況で、40代の人の職がそう簡単に見つかるものではない。なのに、たった1年の保障しか受けられないのだ。
 
職業訓練学校に入れば支給期間が若干、延びたりするなどの裏ワザはあるが、その期間内に職が見つからなければ、後は何の保障もない。

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日本では失業はそのまま無収入となり、たちまち困窮

だから、日本では失業はそのまま無収入となり、たちまち困窮する、ということにつながるのである。

しかし先進国ではそうではない。

先進諸国は、失業保険だけではなく、さまざまな形で失業者を支援する制度がある。
 
その代表的なものが「失業扶助制度」である。
これは、失業保険が切れた人や加入していなかった人の生活費を補助する制度である。「失業保険」と「生活保護」の中間的なものである。

この制度は、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデンなどが採用している。

たとえばドイツでは、失業手当と生活保護が連動しており、失業手当をもらえる期間は最長18ヵ月だけれど、もしそれでも職が見つからなければ、社会扶助(生活保護のようなもの)が受けられるようになっている。

期間が短いうえ期間が終われば経済的にも見てくれない

他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられるような制度を持っている。

その代わり公共職業安定所が紹介した仕事を拒否すれば、失業保険が受けられなかったり、失業手当を受けるために財産調査をされたり、などといった厳しい制約もある。

日本の場合、失業すれば雇用保険の失業手当は一定期間雇用されていた人ならだれでももらえるけれど、期間が短いうえ期間が終われば経済的には何の面倒も見てくれない。