街中に電柱があるのは先進国で日本だけ
日本では、国全体に電柱がたち、電線が張りめぐらされている。
日本人は電柱のことを「電気を通すためになくてはならない設備」と思っており、街中に電柱があることをまったく不思議に思っていない。
しかしこの電柱は、先進国にはほとんどないということをご存じだろうか?
海外旅行をしたことがある人なら覚えがあると思うが、欧米には電柱や電線というのはほとんどないのだ。先進国の大半で、電線は地中に埋められている。先進国の中で、これほど電柱があるのは日本だけなのだ。
いや、先進国だけではなく、世界全体で見てもこれほど電柱がある国というのは珍しい。
表7を見ればわかるように、先進国の主要都市はおろか台北でも、ほぼ無電柱化が達成されている。韓国の首都・ソウルも、50%近くまで進んでいるのである。
また表7にはないが、フランクフルト、香港でも100%近い無電柱化が進んでおり、ニューヨークは80%以上、インドネシアのジャカルタでも30%を超えている。
東京の8%、大阪市の6%というのは、異常に低い数値である。
電柱は、地震や台風などの災害時に大きな危険要素となる。地震や台風が頻発する日本こそ、無電柱化をどこよりも進めなくてはならないはずなのに、この体たらくはどういうことなのだろう?
昨今でも、台風や豪雨のたびに、どこかしらで大規模な停電が発生している。
たとえば2019年9月の台風15号では千葉県を中心に90万戸で停電が発生し、3週間近く復旧しない地域もあった。これらのことは、電線を地中化すればかなり防げたのである。
無電柱化の推進というのは、阪神・淡路大震災のころから言われていた。が、30年経っても、まったく進んでいないのだ。
これは、もちろん、行政の無策である。
無電柱化の費用というのは、日本では、国、地方、電力会社の三者が3分の1ずつ負担することになっている。しかし、これは国が主導して行ってもいいのだ。
何度も触れたように、日本は90年代に公共事業に巨費を投じているし、現在でも先進国では最高レベルの支出である。にもかかわらず、電線の地中化という重要な社会インフラがまったく未整備なのである。