キングが悪口雑言を浴びせた大ヒット作
『シャイニング』(1980)
「美しい大型車だが、エンジンがついてない」などとキングが悪口雑言を浴びせたことでも知られている、あのスタンリー・キューブリック監督による『シャイニング』。
雪に閉ざされた山頂のホテルで冬の間だけ管理をすることになった3人家族だったが、小説家を目指す父親は徐々に常軌を逸していく。
原作は“シャイニング”と呼んでいる超能力を持った幼い息子の話であり、恐怖が立ち込めるホテルを描いたお化け屋敷ものでもあるのだが、キューブリック版はジャック・ニコルソン扮する狂っていく父親に焦点を当てたサイコドラマに。
つまり、ジャンルが変わってしまったわけなのだが、これはこれでめっぽう怖いのも事実。スーパーナチュラルな恐怖と人間が生む恐怖という、恐怖のWパンチをソリッドに描いたところはさすがキューブリック。
伝説となった驚愕のラスト
『キャリー』(1976)
キングの小説の初の映画化はこちらのブライアン・デ・パルマ監督作品。狂信的な母親に育てられ、学校ではいじめられっ子の女子高生キャリーが、秘めていた超能力を発揮し、学園を恐怖のどん底に叩き落とす。
キングが「私の小説より洒落ている」というのは、映像的に見どころが多いから。冒頭の女子シャワー室の美しさとエロチシズム、そこで初潮を迎えたキャリーがその血におののく姿は、これから始まる血みどろの惨劇を予感させるに十分。
クライマックスではデ・パルマ得意のスプリットスクリーン(画面分割)を駆使して緊張感をマックスまでに高めてくれる。そして、いまや伝説ともなったあの驚愕のラスト! 本作の成功がなければ、キングホラーはここまで映画界で愛されなかったかもしれない。
キャリーを演じたシシー・スペイセクはこのときすでに27歳だったが、高校生役に違和感はまったくなかった。
原作とは異なる解釈がせつなすぎる
『デッドゾーン』(1983)
タイトルは主人公の超能力のこと。交通事故に遭い長い昏睡状態から目覚めると、触った人間にまつわる死の瞬間“デッドゾーン”を見られる能力を手に入れてしまったのだ。
原作では、その能力によって世界の未来を垣間見てしまった主人公が、人類の悲劇を阻止しようとする大きな物語になっているが、デビッド・クローネンバーグ監督による映画版では、もっと主人公の心情にフォーカスし、彼のせつなすぎる想いを丹念に描き出した。
他者とは異なる能力を持ってしまった人間の悲劇という意味では、むしろ映画版のほうがよりエモーショナルかもしれない。本作も原作とは異なる解釈を施し、胸が痛くなるほどのせつなさを生み出した。主人公を演じたクリストファー・ウォーケンがこれまたすばらしい。