シンガポールの大学生は超勤勉

「みんな修理の仕事とか力仕事で大変なのに、給料も低いんです」

シェリーさんの家庭は、後者の「多くの人たち」ということになる。だから家計を犠牲にしても、家庭教師をつけ、英才教育をシェリーさんに受けさせたということなのか。

「才女が生まれたってこと?」
と尋ねると、
「うん」

シェリーさんはすぐに答えて笑った。どうやら、謙遜や遠慮といった行為は必要ないらしい。

「大学時代も、とにかくいろいろ忙しくて。授業のある日は学校へ行って、家に帰ったら次の日の授業の準備しなきゃいけない。いっぱい読むものがあって、次の日、学校へ行って、また帰って準備の繰り返し。無事卒業しても、海外で就職する人も多いんです。私みたいに、やりたい仕事がたまたま海外にあるという……」

シンガポールの大学生は宿題が多く、勉強をする学生で図書館はいつも満席。シェリーさんのように、勉強、食事、睡眠を繰り返すだけの忙しい大学生がほとんどのようだ。

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写真はイメージです

シェリーさんのこれまでの人生も、勉強に忙しいばっかりだった。オーストラリアの大学でも研究と勉強がひたすら続く。シェリーさんは大学から奨学金を毎月20万円くらいもらって、研究生をしていた。この金額は、オーストラリアではけっして高くはない。研究生の先は講師になるか、研究者になるかである。いずれも、あまり豊かなお金には縁がなさそうだ。

シェリーさんは歯並び以外、かなりの美形と言えるが、金銭的余裕がないのか、興味がないのか、とても質素な服装をしている。七分袖のシンプルな紺色のワンピースにノーブランドの布製バッグを持っていて、前姿は美しいが、顔がわからないうしろ姿からは誘いがかかりにくいタイプだ。なんと奨学金のなかから、仕事をリタイアした親に仕送りもしているという。

「オーストラリアの大学院では授業はあまりなくて、とにかく研究ばっかり。ずーっとパソコンの前に座って、修士論文だったり宿題だったり、先生へのレポート提出だったり……。締め切り締め切り締め切りの繰り返し」

修士論文は、A4サイズの紙に英語で280ページ程度書かなくてはいけない。そればかりか、出版社へ送る原稿や学会で発表する論文などを書くために、毎日、研究やインタビューを重ねる。研究生でい続けるということは、こういうことなのだそうだ。

「パソコンを長時間使えば目がとっても疲れますから、研究以外の時間は寝てました。1日10時間とか……」

シェリーさんは、ちょっと照れくさそうに笑った。研究研究でとても忙しい毎日ということは、これで私にも十分に理解できた。