「公園」で売春することを「交縁」と呼ぶ

かつて街娼も買春客も「ハイジア」と呼んでいたこの地の顔つきの変化を表すように、新語も生まれた。先に触れたように、いまの街娼たちは、この地での売春行為を隠語で「公園」と呼ぶ。大久保公園界隈でカラダを売ることを指す。対して買春客は、「公園」で女性を買うことを「交縁」と呼ぶ。公園で交渉── その公と交をかけて、さらに女性と〝縁を結ぶ〟という意味だ。時は流れ、いまでは街娼たちも「公園」で売春することを「交縁」と呼ぶようになった。

「交縁」というワードが世間に認知されたのにはこんな経緯がある。
「2022年の3月ごろだった。ツイッターで、買春目的の男たちがこの地のことをツイートし始めた。その男たちっていうのは、ベースは海外風俗とかが好きな人種で、なかでも有名なのが『M』さん。そのMさんが、かつての呼び名『ハイジア』じゃなくて『交縁』という造語を使った。そのワードがどこかなんか刺さったんだろうね。するとMさんのフォロワーたちが『交縁』を使い始めた」(仙頭)

「#交縁」ワードは徐々に盛り上がりをみせ、ツイッターに限らず、やがてマスコミまでもがこの言葉を使う形で定着する。
 
ツイッターで拡散されたのは、盗撮された風景写真に添えられた「いま何人が立っている」という情報や「この子はいくらで買えた」という売値の話だ。ばかりかハメ撮り動画まで。一部の発信者は、ツイッターから有料サイトに誘導し、女の子の顔のモザイクなし写真や動画を販売して利益を得ることを原動力にしている。

2023年4月に開業した東急歌舞伎町タワー。大久保公園からもその姿は見える(高木氏撮影)
2023年4月に開業した東急歌舞伎町タワー。大久保公園からもその姿は見える(高木氏撮影)

そこにはルール無用の空間が広がっていた。だが、それにより買春客が劇的に増えたことで、さらに新顔が増えたというのがいまの〝現在地〟の状況だ。街娼の人数からすれば、2022年6月末がピークであるものの── むろん、新旧入れ替わりはあるが── その後は横ばいを続け、それがいまも続いている(2023年6月現在)。

新顔たちは大久保病院側を主戦場にしている。つまり大久保病院側に立っているのは── 盗撮を気にしない── 盗撮されてでも稼ぎたい── 稼がなければいけない女の子たちである。

もっとも、なかには盗撮を恐れて少し外れに立つ者もいる。例えばラブホ『COLORFUL P&A』前の自販機横など、盗撮犯から身を隠しやすい場所だ。