ミラクルひかるとの大ゲンカ

だが、売れてテレビに出るためには、オリジナリティーのあるネタを発明しなければいけない。俺に一体何ができるだろう。

まずは、店長に掛け合って、「俺たちだけの日を作ってもらえないか」と直訴した。当時の若手を評価してくれていた店長は快諾してくれ、こうして、月に一度の「若手デー」が始まった。

当時のメンバーはみな若く、尖っていた。ケンカもよくした。

何度目かの打ち合わせの時のことだ。「こんな構成でどうだろう」と提案をしたところ、宇多田ヒカルのモノマネで知られるミラクルひかるが「だったら、こんなのはどうですか?」とさらに提案してきてくれた。

ただ、いかにも客に媚びた演出に思えたので、「そういうのはやめないか」と返すと、負けん気の強いミラクルは頭に血が上ったようで突っかかってきた。議論は徐々にヒートアップし、次第に腹が立ってきた俺は、ミラクルが座っていたイスを蹴り上げた。

なぜか売れない中堅ピン芸人・TAIGA「ミラクルひかるのイスを蹴り上げ、大ゲンカ」「営業先での200人乱闘事件」…売れたくて必死だったショーパブ時代_2

「テメーが男だったらぶん殴ってるからな!」

他のメンバーは見事に固まってしまっていた。「まあまあ」と言いながら誰かが止めてくれたが、ミラクルはふてくされて、こちらを見ようともしない。どっちが正しい、間違ってるとか、そんなことではなかった。ただ、みんな売れたくて必死に頑張っていた。そんな熱い気持ちで集ったメンバーだから、もちろんすぐに仲直りした。諍いから10数年後、俺の結婚式でミラクルが宇多田ヒカルを歌ってくれたのは、良い思い出だ。