「君はジャイアンツのためにプレーしたいのか?」

――三冠王をはじめ、毎年大活躍するブーマーさんはパ・リーグ一筋を貫き通しました。メジャーへの復帰や当時より人気のあったセ・リーグの球団でプレーしなかったのはなぜですか?

ウエダサン(上田利治/元阪急監督)の存在があったからです。何年のことだったかは忘れましたが、読売ジャイアンツにトレードで移籍する話がありました。かなり具体的なところまで契約がまとまりかけたのですが、ウエダサンとアメリカのナッシュビルで食事をともにする機会があったんです。私は当然、ウエダサンも(移籍の話を)知っていると思っていたんです。でも、その話をすると「なに? トレード?」と、なにも聞かされていなかったみたいで、私にこう言ったんです。

「君はジャイアンツのためにプレーしたいのか?」

私はこう答えました。「あなたが監督を続けるなら、私はあなたのためにプレーしたい。ただ、もしあなたが監督を辞めるのであれば、私もチームを去ろうと思っている」。

あのころ、ウエダサンも監督を続けるのかどうかはっきりしていなかったんです。でも、私がそう言ったらウエダサンは「俺は監督を辞めない」と約束してくれました。なので、ジャイアンツではなくチームに残留することを決断したんです。

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――ブーマーさんにとって、上田監督の存在はそれほどまでに大きい。

ウエダサンは「Perfect Manager=完璧な監督」でした。絶対的な存在でしたし、外国人選手の私にとっては素晴らしい指揮官でもありました。自由にやらせてくれたので自分らしくプレーすることができました。日本で10年間もプレーできたことの要因には間違いなくウエダサンの存在があります。

現役時代のエピソードを楽しそうに語るブーマーさんの姿を見ると、彼がなぜ日本のチームメイトや対戦相手、ファンに愛されたのかがわかる気がする。ただ、来日も11年ぶりで、普段はネットを見ることもほとんどないというブーマーさんは、現在の日本プロ野球の情報はほとんど知らないという。

「誰かいい選手がいたら教えてほしい」

最後に、ブーマー氏からこんな逆質問を受けたので「今、バファローズではセデーニョという選手が『ブーマーの再来』と呼ばれている」と伝えると、不敵な笑みを浮かべながら、こう答えてインタビューを締めてくれた。


「ブーマーに“再来”はない。ブーマーは、世界に一人しかいないからね」

#1 ブーマーが現役当時、日本に来て一番驚いたこと。「ホテルの大浴場でいきなり裸の姿を撮られたことも…そんなに私のイチモツが撮りたかったんですかね」

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取材・文/花田雪 撮影/村上庄吾
取材協力/一般社団法人日本プロ野球外国人OB選手会(JRFPA)
撮影協力/MINT LAB TOKYO