鯨井さんたちのファッションは、平成というよりトレンディ(眉月じゅん)
大熊 最近では、「平成レトロ」なんて言葉もよく耳にしますね。
眉月 ファッションの世界でも、もうずっとレトロブームです。私も最近覚えた言葉なんですけど「Y2Kファッション」といって、Z世代の子たちのあいだで、2000年代頃のファッションが流行っているそうです。若い子たちが少し前の世代のファッションを「レトロで可愛いもの」と受け取るのはわかるのですが、不思議なのは、実際に当時を経験している私にも可愛いと思えること。しかも、よく見てみると昔のまんまじゃないんですよ。細部がちょこっと違う。
サンカクヘッド 僕もダンやヒバリたちの服装を描くときは、当時のファッションを参考にしているのですが、そのまま再現することはなくて。「平成感」はあくまでワンポイントに留めています。その方がオシャレというか、可愛くなるんですよね。
眉月 いや、ホントにそうなんですよね。きっとあまりにも忠実に再現されてしまうと、私たちも「懐かしい」というより「恥ずかしい」と感じでしまうんじゃないかな。
——眉月先生は作中のファッションで、イメージしている時代はあったりしますか?
眉月 時代で考えたことはなかったですが、「トレンディさ」みたいなものは意識していますね。だから平成でも昭和でもなく、バブル期になるのかな。あの頃って、百貨店の包装紙とかも妙にギラギラしていて。そういうイメージで、やたら派手な柄のトーンを貼ったりすることはありますね。
サンカクヘッド 平成のファッションって、ホントに独特ですよね。やたらビカビカしていたり、モコモコしていたり。なんていうか、今より一段階くらいテンションが高い気がします。
眉月 コンテンツだけじゃなくて、世の中全体がまだまだ元気だったっていう証拠なのかな。
それでも平成は「世界がうらやむ」ような明るい時代だった(サンカクヘッド)
——一方で、長引く不況や、二つの震災に見舞われた暗い時代として平成を記憶している人も多いと思います。
大熊 阪神大震災と地下鉄サリン事件があった1995年がターニングポイントとして論じられることも多いですよね。
サンカクヘッド それでも、やっぱり僕にとっての「懐かしい平成」は、明るい楽しい時代なんですよね。
眉月 私もそうですね。もちろん暗い平成も憶えているけれど、それはまだまだ生々しくて、懐かしがるような対象じゃない。
サンカクヘッド 僕はモーニング娘。の「LOVEマシーン」が大好きで、今もよく聴くんですが、あの曲が出たのは1999年で、平成不況の真っ只中なわけです。けれど彼女たちは「日本の未来は、世界がうらやむ」と歌うんですよ。それがすごく平成っぽいなって。あの頃は今みたいな悲壮感はなかった。景気が悪くても、まだまだ日本は元気があった。僕にとっての平成は、そんな時代です。
<サンカクヘッド先生と眉月じゅん先生の週刊ヤングジャンプ連載中の漫画はこちら!>
後編に続く
©サンカクヘッド/集英社
©眉月じゅん/集英社
取材・文・撮影 福地敦