団地って、一つの国のようなものなんですよ(サンカクヘッド)
——サンカクヘッド先生が、最初に「団地」というテーマに興味を持ったきっかけを教えてください。
サンカクヘッド そもそも僕自身が、団地育ちなんです。『平成少年ダン』で描いている団地の光景も、おおむね僕自身の実体験がベースになっています。僕が住んでいた団地で暮らしている人たちは、身も蓋もない言い方をすればみんな同じような経済状況だったような気がします。でも、だからこその一体感が生まれるというか。当時の僕にとって、団地は「一つの国」のような感覚でした。
眉月 実は私もすごく団地が好きなんですよ。私、『九龍』の次は団地モノをやりたいですもん。というか、そもそも九龍も団地みたいなところがあって。どちらも閉じた一つの世界が形成されている。そういう箱庭のような世界で展開される物語が好きなんです。とはいえ、私は九龍城に行ったことがないし、団地育ちでもないから、あくまで資料を読んでの想像にすぎないのですが。
サンカクヘッド でも、たしかに昔の団地って、その内側で生活が完結していました。団地内にいろんなお店とかもありましたもん。それで何号室に誰が住んでいて、とかみんなわかっている。それと団地が面白いのは、みんなが同じ間取りの部屋に住んでいること。でも、その家庭によって空間の使い方が微妙に違うんですよ。友だちの家に行くと「この六畳を居間にしちゃってるのか!」とか、変なところに感心したり(笑)。
眉月 サンカクさんのお話を聞いていたら、九龍や団地に惹かれる理由が、もっとクリアになってきました。私は「同じようで少し異なる小さなものが、いっぱい集まって一つの大きなものをつくっている」という構造が好きなんですよ。お菓子の詰め合わせでも、オムニバスの短編集でも。団地や九龍もきっと、それと同じなのかもしれません。
サンカクヘッド 小さな一部屋一部屋に、きっとそれぞれのドラマがあるんですよね。