マナー違反をなくすことは不可能

このような現状を、銭湯で働く従業員たちはどう思っているのだろうか。銭湯で働いて30年という女性スタッフは、こう言う。

「サウナブームでお客さんは増えたし、満員の日もあるんだけど、人が増えるとマナーの悪い人も増えるみたいで、常連の人に『どうにかしてくれ』って言われますよ。正直、ブームに乗っかってくる人は、その後も来てくれるかわからない。だから常連さんは大切にしたいんです。かといってサウナ室に入って注意することもなかなかできないし、このままでは足が遠のいちゃうんじゃないかって不安になりますね」(60代女性・銭湯従業員)

「若い子たちが言う『ととのった〜』。あれ言わなきゃダメなんですか」大ブームの裏でサウナ嫌いおじさんが急増するわけ_3

東京・中野の人気銭湯、松本湯で働くスタッフからは諦めの声もあがる。

「マナー違反を全てなくすことは不可能だと思っています。公衆浴場等の入り方を知らない、貼り紙を見ない、複数人で来ていて周りが見えない、分かっていても自分本意でやってしまう、などさまざまな方がいらっしゃいます。

さらに迷惑行為を、従業員が注意するのか、見て見ぬふりをするのかでも違いがあると思います。マナー違反をする人が一定数いることを受け入れたうえで、この施設は楽しめるのか、楽しめないのかを選択していくしかないですね。ちなみに松本湯では、マナー違反のお客様にはスタッフがお声がけさせていただいています」(30代男性・銭湯従業員)

松本湯スタッフ 蒸しゴリさん
松本湯スタッフ 蒸しゴリさん
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ストレス解消や疲労回復などに上手に活用できれば、健康にも繋がるサウナ。サウナ大国フィンランドでは、約540万の人口に対して2~300万ものサウナがあるという。だがサウナブームが続く日本では、しばらくの間混雑するサウナに入る以外選択肢はなさそうだ。

サウナブームが、これ以上アンチサウナーを増やさないことを願うばかりだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
写真/shutterstock
松本湯関連写真/八坂悠司