心得①「今できること」にフォーカスする

熟年のセックスでは、「できなくなったこと」よりも「今できること」に焦点を当てましょう。

加齢に伴い私たちの体力や筋力は低下し、さまざまな体の変化が生じます。男性ではEDの有病率が上がり、女性はエストロゲンが低下し、腟の潤いが減少し、性交痛が生じることもあります。若い頃には何の苦労もなくできていた体位やプレイが困難にもなります。

ベッドの上でそんな現実を目の当たりにすると、「もう自分は終わってしまった……」と切なさや悔しさ、無力感やコンプレックスに苛まれることがあります。逆に、「いや、まだだ!まだオレはできる!」と加齢に抗いたい反骨心が芽生えることも。そして、女性を抱きかかえたまま挿入する「駅弁」など体に負担のかかる体位を試みて、あえなく腰を痛めてしまう中高年男性は少なくありません。

熟年の“愛の作法”は「60歳で諦めるのではなく、60歳からいよいよ集大成となる」…女医が教える「中高年の性」を最高にする「型」の存在_2

しかし、考えてみてください。「若い頃と同じようなセックスをできなくてはならない」という決まりはどこにも存在しません。もしこれが短距離走なら、「学生時代は100mを12秒で走れたのに、今は24秒かかってしまう。いかんいかん!今も12秒で走れるようにならなくては!」と考える人は、ほとんどいないでしょう。ところが、セックスに関しては「若い頃のようなたくましい勃起や激しいピストンが60代になっても必要なんだ」と考える人が多いようです。当然ながら、目標の設定そのものに無理があります。

ここで大切なのは、過去の自分と比較するのではなく、「今の自分にできること」に目を向けることです。もし今、糖尿病で勃起に問題があるのなら、「おヘソにつくほど勃起しなくては」などとかつての自分を思い出すのではなく、今の自分が少しでも勃起が高まる方法を探しましょう。

もし中折れに悩んでいれば、少しでも勃起力を維持できる方法を考えてみましょう。何歳になっても「今、できること」に焦点を当て、自分なりの「ゴールデンゴール」を設定しましょう。どんなに小さな目標でも構いません。ひとつひとつ目標を達成し、以前よりも少し硬くなった勃起を目にすれば、自己肯定感が高まり、過去と比較して弱気になっていたときよりも、見違えるように元気になっているはずです。