医療現場におけるED治療はヒアリングから始める

EDを治すためのアプローチとして、「バイアグラを飲めばいい」と言う人もいます。もちろんそれも間違いではありませんが、「ED=バイアグラ一択」という考えは拙速です。

ここで、医療現場におけるED治療についてお話ししましょう。

ED外来などの医療機関では、日本性機能学会と日本泌尿器科学会が共同でまとめた『ED診療ガイドライン』に沿ってEDの治療を行います。これは、医療従事者に向けて書かれた手引書のようなものです。

私たち医師が患者さんの診療にあたるときは、『EDガイドライン』に則り、患者さんのお話を聞き、原因を探るところから始めます。

たとえば、患者さんが高血圧のコントロールがうまく行われていない、糖尿病の血糖値が安定していないという場合には、高血圧や糖尿病がEDの原因だと考えます。糖尿病になると神経にも障害をきたすため、脳からの勃起指令が性器に伝わりません。

また高血圧になるということは、動脈の血管が硬く細くなっている状態なので、当然ペニスにも血液はうまく流れ込みません。また、「いびきが時々止まる」と訴える患者さんは、睡眠時無呼吸症候群を疑い、これもEDの原因と考えます。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病などを併発している場合も多くみられます。

糖尿病、高血圧、高脂血症……これらは生活習慣病といわれるものです。また、肥満やタバコをたくさん吸っている、脂質の多い食事をしている、運動不足に陥っているといった場合も、まずは生活習慣を改め、EDをもたらす要因をひとつずつ排除していくように指導します。

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1日30分程度のランニングで、EDのリスクが30%も低下する

ここまでたくさんのEDに至る要因を挙げてきましたが、「肥満・運動不足・喫煙」は自分で改善できるものです。米国の研究では、週に2.5時間以上のランニングをしている人は、EDのリスクが30%ほど低下したというデータもあります。

週2.5時間といえば、1日30分程度です。男性としての自信を失うリスクを1日30分のランニングで防げると考えれば、そこまでハードルは高くないはずです。また、運動の強度が増せば増すほどEDのリスクが低下することもわかっています。

適度な運動は糖尿病や高血圧、心疾患にも良い影響を与えます。また、運動によって負荷をかければ筋力もアップし、男性ホルモンのテストステロンの分泌量も増加します。うつ病も適度な運動によって改善が促されるといわれています。睡眠時無呼吸症候群も肥満が大きな引き金といわれており、定期的に運動する習慣を取り入れて減量できれば、EDの改善が見込めます。

「性」と「精」の好循環のように、運動を起点として、実にさまざまな好循環が体に生まれます。適度な運動は単に勃起力を取り戻すだけでなく、健康で精力に溢れた体をもたらしてくれます。

まずは「ED=バイアグラ一択」と考える前に、生活習慣を見直すこと。それだけで自力でEDを解決することも、十分可能なのです。