「奪い合う」価値観を「ゼロから創造する」価値観へ変えていく
——小学生や中学生の子どもが経営について学ぶメリットは何ですか。
学校も実は「経営」の対象です。学校で起こるいじめやからかいなども、実は経営によってコントロールできる可能性があります。
例えば、自分が持っているゲームを友人が返してくれず「返してよ!」といってもラチがあかない場合、どうすればよいでしょうか。そのときに自分できちんと考えて「友人はゲームを返したくないのではなく、ゲームがしたいだけなんだな」とわかれば、「うちでそのゲームを一緒にやらない?」という解決策が提案できます。
このように物事を経営視点で考えられると、子ども同士で解決できることが増えると考えています。そして、子どもにそんな力があることを、大人が知ることも大切だと思います。
——『13歳からの経営の教科書』では、中学生同士がさまざまなビジネスに取り組んでいきます。この物語を通して子どもに伝えたかったことは何でしょうか。
伝えたかったのは「価値はゼロから創造できる」ということです。物語の冒頭、主人公は「何かビジネスをしてみたい」という個人的な欲求から行動を起こしました。しかしだんだんと、他人にも応援されるような事業を手がけ、最後には価値のないものから価値を生み出していきます。このように、人との対立が解消し、協力をあおぎながら経営していけば、価値を創造できるわけです。
経営というと「所得の奪い合い」というイメージが強いかもしれませんが、それは固定化された市場内での話。しかし実際のところ、市場はグローバルで拡大しているので「所得は創造できる」と考えています。
資源は有限、でも所得や価値は無限。この価値観が普及すれば、詐欺や強盗などで「人から奪おう」と考える子どもや大人は減るのではないでしょうか。
取材・文/金指歩
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