“いじめられっ子が手を組んだようなコンビ”
もともと岩尾とカネシゲは大学時代の同級生だった。
「当時の僕はパンクバンドを組んでいて、ミュージシャンを目指していました。電気グルーヴなんかも好きで、音楽にサブカル系のお笑いを入れたら面白いかなと思ったんですけど、いい感じのサークルがなくて。
漫才研究会のドアを開けたら、そこに岩尾がいたんですよ。学部も専攻も一緒で、出席番号も近かった。岩尾はそこにおるだけで雰囲気がある存在でしたね」
そこから人生が動き始めた。
「サークルの合宿かなんかで、先輩に『女の子をナンパしてこい』と言われたんですけど、ふたりとも声をかけられるようなタイプではなくて。
話しながら時間をつぶしているうちに、岩尾が『秋からNSCに行こうと思ってる』と。それで僕は『面白そうやな。俺も行きたい』とノリで返事したんです」
NSCとは吉本興業のお笑い養成所のことだ。1期生はダウンタウン。その後もナインティナイン、千原兄弟、中川家、ケンドーコバヤシ、陣内智則など数多くの人気芸人を世に送り出している。
「ある日、岩尾から電話がかかってきて『14期生の募集があるみたいやけど、どうする?』と言われて。正直、忘れてたんですけどね。ふたりでお笑いコンビを組もうと熱く語りあったこともなくて、ただの友だちでしたし」
コンビ名は「ドレス」。先輩である東野幸治の番組に出たときに「いじめられっ子が手を組んだコンビですか」といじられたほど地味だった。
主戦場は大阪・難波にあった心斎橋筋2丁目劇場。
「関西のテレビ局はお笑い番組も多かったんで、そこで頭角を現すコンビもいました。劇場独特の文化があって、みんなが戦わされるんです。ランキングをつけられて、昇格したり降格したりの繰り返しでした。
価値基準は面白いかどうか。貧乏だとか友だちがいないとか、社会的にマイナスなことでもお笑いに変えることができればオールOK。価値観がひっくり返るオセロみたいな環境ですよね」