コスパ意識で仕事の質が落ちる
しかし、コスパ意識に支配されて仕事をしていると、内容よりもスピードを重視しますから、仕事の質が落ちることは避けられません。そんな仕事は当然のことながら、AIに取って代わられるでしょう。
私はこれまで、コスパやタイパを考えて仕事をしたことはありません。ただありがたいことに84歳の今も仕事の依頼が次々と舞い込み、待ってもらっている状態です。
私の場合、仕事において効率を優先することはありませんが、目の前の仕事に1ミリも手を抜かないということは死守してきました。働いている姿を相手に見せることはなくとも、そのことは仕事を通して、しっかり相手に伝わるようです。
AIには感情がないため、面白いと思ったり感動したりすることがありません。だから人間がAIに勝つためには、自分のすべての感情を投入し、自分が生み出すサービスを使った人が面白いと思ったり感動したりするものをつくらなくてはならないのです。
これからの仕事において一番大事なのはこういうことではないかと、最近とみに感じるのです。
コスパが悪いからこそ、やる価値がある
コスパ・タイパといった言葉を日常的に使う人が増えているのは、現代社会が効率や合理性に大きな価値を置いているからに他なりません。
コスパ主義・タイパ主義が強くなれば、仕事においても、効率のよいものや、短い時間で結果が出るものばかりを選ぶようになるでしょう。この仕事は努力の割にはコストや時間がかかるからやめようとか、こちらの仕事は少しの努力ですぐに結果が出そうだからがんばろう、というふうに。
もちろん効率を考え、工夫することは大事です。しかし、すべてにおいてコスパやタイパを重視する考え方に、私は反対です。
その人にとってコスパやタイパはよくなくとも、達成感や満足度が高く、社会の役に立つことは、いくらでもあるからです。
実際、仕事や人生には実にさまざまな〝成し遂げるべきこと〞があります。やりたいから、好きだからという思いから、個々人が力を入れるべきことはたくさんあるでしょう。