フェイク情報に踊らされ、陰謀論めいた見解に傾く人
コロナ禍においては、「インフォデミック(infodemic)」という概念が注目されました。インフォデミックとは、情報(information)と感染症の広がりを意味するエピデミック(epidemic)を組み合わせた造語で、SNSなどを通して不確かな情報と正確な情報が広まる現象のことです。
コロナ禍が広がっていく過程においては、ウイルスの特性、ワクチン接種やマスクなどの対策に対して、何が正しくて何が間違っているのか定かではないさまざまな情報が溢れ、どの情報に接しているかによって、立場や意見が大きく分かれました。なかにはフェイク情報に踊らされ、陰謀論めいた見解に傾く人もたくさんいます。
このように、真実とフェイクが入り交じったSNSなどによる大量の情報が、人々の意識や考えを混乱させる現象は、世界中で起きています。
アメリカのトランプ前大統領の発言が象徴的ですが、日本でも新型コロナウイルスに関しては、何が本当かわからないという状況がSNSによって増幅されました。
まさに「anything can happen」。どの情報が正しいかわからず、膨大な情報の海のなかで的確な判断をすることがいかに困難か、しみじみ感じている人も多いでしょう。
人間の「理性の血」と「動物の血」
そうなると何よりも大事なのは、自分の頭できちんと考え、正しく判断し、行動することです。そのためには「自分の価値判断の基準」をいかに広げるかがポイントになります。
そのために必要なのは、まずは読書。本を読むことで思考力を身につけ、ものごとを冷静に見つめ、きちんと判断する力を培う。読めば読むほど、不可解な「人間の本質」についても理解できるようになります。次に音楽などの芸術に接して感性を研ぎすまし、想像力を広げ、直観力を磨く。そしてさまざまな立場や異なる見解を持った人たちと、できるだけ多く接し、彼らの言うことに耳を傾ける。そうした努力で「自分の価値判断の基準」を広げていくのです。
「自分の価値判断の基準」が確固たるものになれば、バランスのとれた判断ができますから、この情報はおかしいとか間違っているといった、情報に対するリテラシーが高くなるのです。
玉石混淆の情報に惑わされないために、もう一つ大事なことがあります。それは、人間が持っている「動物の血」を律することです。
人間には本質として、「理性の血」と、自然の本能とも言える「動物の血」が入り交じっています。