#2
#3

映画を早送りして観る若い世代

先頃、ファスト映画をユーチューブにアップロードしたことで、その投稿者が大手映画会社から訴えられ、5億円の損害賠償を命じる判決が下されました。ファスト映画とは、映画の映像を無断で使用し、字幕やナレーションをつけて10分程度にまとめてストーリーを明かす違法動画のことです。

最近、ネットで配信される映画を早送りして観る若い世代が増えているようですが、ファスト映画は映画を早送りして鑑賞するより、さらに効率よく映画作品の内容を知ることができるということで、かなり多くの視聴者が観たとのことです。

しかし、早送りの鑑賞にしろ、ファスト映画にしろ、そういう映画との接し方は、鑑賞とは言えません。

2時間程度の尺を持つ映画であれば、その時間をかけることではじめて成り立つストーリーの流れやリズム、テンポがあるわけです。早送りの鑑賞もファスト映画も、そうしたものをまったく無視した行いです。

たとえば、会話と会話の間や何気ない風景描写にだって重要なメッセージが込められているかもしれないのに、そんなものは一切おかまいなしです。

そんなふうにして映画に接しても、心に響くものはないでしょうし、受け手に発信されるメッセージやテーマを深く考えることもないでしょう。

ベンチャー女性経営者「川端康成の小説はコスパが悪い」と語る…コスパ・タイパを優先する”ファスト動画世代“に危惧されるむなしく貧相な人生_1
すべての画像を見る

映画作品はただの情報の塊なのだろうか

こんな視聴の仕方をする大きな理由は、言うまでもなく時間の節約です。それによって浮いた時間を有効活用できる、最近流行りの言葉で言えばタイパ(=タイムパフォーマンスの略。かける時間に対する満足度)がいいわけです。

もう一つは作品について、さまざまな情報を持っておくことが円滑なコミュニケーションにつながると信じているので、鑑賞ではなく情報収集でいいという感覚が強いのだと思います。

たとえば仲間内で、ある映画作品の話題が出たとき、その作品のことを知らなければコミュニケーションの輪から外れてしまいます。それを避けるため、話題の作品の大まかなところを押さえておこうとするのです。

結局、早送りの鑑賞もファスト映画も、映画作品をただの情報の塊としてしかとらえていないのです。