公明の浮いた「70万票」の行方
もうひとりは小池百合子東京都知事だ。女性初の総理大臣にもっとも近い距離にいるとされた小池都知事もすでに齢70歳。都知事を2期も務める間に国政ブランクも長引き、永田町での影響力もめっきりと衰えを見せている。その小池都知事が今回の解散見送りを機に、久しぶりに政局の中心に躍り出るのでは?という見立てが浮上しているのだ。
きっかけは衆院小選挙区「10増10減」にともなう自公のさや当てだ。新設される東京28区での候補調整がドロ沼化し、ついに東京で自公選挙協力を解消する騒ぎになったのだ。
公明が前回の21年衆院選で獲得した東京選挙区での比例票は71万5000票。この票の大部分が、小選挙区では自公協力によって自民候補に回ったとされる。その威力は絶大で、もし公明票がなかったら、自民は東京小選挙区で当選した16人の自民議員のうち、7人が野党候補に逆転負けしていたというデータもあるほどだ。
ところが、自公の抗争激化で次回衆院選の東京選挙区ではこの70万票が宙に浮く可能性が出てきた。この展開を見て、「機を見るに敏な小池都知事が動く可能性がある」と指摘するのは政治評論家の有馬晴海氏だ。
「公明にすれば、宙に浮く70万票の有効活用法を探りたい。そこで関西での連携維持と引き換えに、東京でこの70万票を維新に回すというシナリオがささやかれているんです」(有馬氏)
公明は大阪、兵庫の6小選挙区で当選者を出しており、これは維新候補が圧倒的な強さを誇る関西では異例のことだ。たとえば、大阪では19の小選挙区中15で維新候補が当選しており、残る4つが公明。
ちなみに自民、立憲とも大阪小選挙区での当選はゼロだ。このように公明がしぶとく大阪の小選挙区で勝利しているのは維新と暗黙の連携が維持されているためだ。有馬氏が続ける。
「維新は公明が大阪都構想への支持や大阪市議会での協力をしてくれていることへの見返りとして、6つの選挙区での候補擁立を遠慮してきた。だから、公明は楽々と6人もの当選者を出せているんです。
ただ、維新は次の衆院選ですべての小選挙区への候補擁立を目指しており、6選挙区での公明との連携も解消すると宣言している。そうなると、公明の当選はおぼつかない。そこで危機感を深める公明が宙に浮いている東京選挙区での70万票を維新に回す代わりに、大阪での選挙協力を維持する裏取引を維新に持ちかける可能性があるんです」