ーーということは、被害者は被害金の回収はまず期待できないと。それでもカードを使って借金をしてしまった場合には、返済を迫られると思いますが、みなさんどのように対応していますか? 特に印象に残っている被害者を教えてください。
多くの方々は法律事務所で自己破産の手続きに入ります。そもそもですが、被害者はお金が手元にないのです。それで法律事務所に駆け込んで、着手金や自己破産の費用を支払うのにもお金が必要になってきます。それをなんとかして工面しなければならない。加えて、消費者金融やカードローンに手を出していれば、その返済に追われる。
中国人とみられる犯人から、暗号資産への投資詐欺で総額1100万円を騙し取られた28歳の沙也香さんは、私の目の前で、涙ながらに被害体験を語っていました。
彼女は都内のIT企業で働く会社員なのですが、被害を機に、少しでもお金を稼ごうと副業を始めます。その1つがチャットレディーでした。とある事務所のブースで待機し、ネットを通じて男性とチャットするのですが、収入をアップさせるため、アダルトに首を突っ込みます。見ず知らずの相手に上半身を脱いでいました。「自分はここまで堕ちたか」と彼女が語った言葉が、今も脳裏に焼きついています。
ーーチャットレディーとして働けるということは、容姿端麗な方を想像します。沙也香さんの後ろ姿の写真を見ましたが、スタイルもよく服装も綺麗で男性経験がそれなりにありそうな「20代女性」という印象を受けましたが。
そうですね。ご想像通りかと。取材は昨年の夏に行ったのですが、待ち合わせの喫茶店に現れた時は、ワンピース姿で、ネイビーの洒落た帽子をかぶり、保護眼鏡をかけていました。赤い口紅が少し派手な印象を受けましたが、どうしてこんな子が国際ロマンス詐欺なんかで騙されてしまうんだろう、と思ってしまうようなビジュアルの女性でした。
そんな詐欺師に引っかからなくても、他に男性なんていくらでも寄ってくるでしょう、と。しかも28歳とまだ若いのに……。
彼女はITの会社に勤めてはいましたが、貯金もなく、親孝行もできていなかったので、現状には満足していなかったと言っていました。一昔前の言い方だと「リア充」ではなかったと。それに友人たちが次々と結婚をしていくなかで、不安な気持ちがあったんだと思います。
そんな時に暗号資産の投資で、「儲かる」とそそのかされ、実際に「模擬投資」で収益を得られたのでのめり込んでしまった感じですね。彼女も被害額1100万円のうち、200万円は父親に借りたお金で、友人にも借金をしていました。