「見えない残業時間」の実態
残業時間が見えなくなることを危惧して、私は2021年11月に共同研究のプロジェクトとして、「学校の業務に関する調査」をウェブ調査により実施した。調査対象者は公立小中学校の教員で、株式会社マクロミルのモニターを利用した。性別と年齢層については母集団と同じ構成比で回答者数を割り当てて、全体で小学校教員466人、中学校教員458人から回答を得た。回答者は、フルタイム(正規採用ならびに常勤講師)で年齢が20代~50代の教諭・指導教諭・主幹教諭に限定している。
調査時期は、全国的に新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が低水準で推移していた2021年11月20日(土)~28日(日)の9日間に定めた。うち5日間が土日・祝日であり、教員が比較的回答しやすいよう設計した。
労働時間に関する質問は、2021年11月第2週(11月8~14日)を指定し、回答を求めた。第2週が定期試験等特別な期間である場合は、前後の適当な通常業務の週を想定するよう指示した。なお11月8日(月)~14日(日)は、全国的に新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が低水準で推移していた時期である。11月14日(日)時点における全国の新たな感染者数は126人、7日間の平均は173人であった。
①持ち帰り仕事の時間数…1日平均50分
まず、学校内での勤務時間と自宅などへの持ち帰り仕事の時間数を、1日当たりの平均値で見てみよう(図2-5)。
平日の学校内での業務時間は、小学校が11時間9分、中学校が11時間35分で、持ち帰り仕事は、小学校が56分、中学校が50分であった。土日については、学校内での業務時間は、小学校が59分、中学校が2時間47分、持ち帰り仕事は、小学校が1時間21分、中学校が1時間28分であった。
参考までに、2016年の文部科学省による「教員勤務実態調査」の結果も記載した。「教員勤務実態調査」は、毎日勤務時間を記録する形式で、大変丁寧な調査である。私たちの調査は平日と土日それぞれの1日当たりの平均的な数値を回答してもらうのみである。そのため、2016年から2021年への変化としては読み込まないほうがよい。文部科学省は2022年度にも継続の調査を実施しており、また私たち自身も2025年度あたりに同じ質問を用いて継続の調査を予定している。
学内の勤務時間数は、退勤時刻から出勤時刻を引いた値である。休憩を取った時間数は考慮していない。なお、文部科学省の「教員勤務実態調査」では、出勤・退勤時刻とは別に、「学内勤務時間」の数値(小学校は11時間15分、中学校は11時間32分)が公表されており、多くの報告書や報道等ではその数値が参照されている。他方で、先行する各種調査では、一般に出勤時刻と退勤時刻を用いて勤務時間数が算出されることが多いため、それら各種調査に合わせる形で本章では、文部科学省の「教員勤務実態調査」についても、出勤・退勤時刻のほうを用いることとした。