業務が、正式には記録・申告されない可能性
一つが、自宅等で行う持ち帰り仕事である。これは、学校の業務は学校内で終えることが原則であることから、もともと在校等時間の概念に含まれていない。平日の帰宅後あるいは土日に、まったく管理されない形で学校の業務に従事している可能性がある。
もう一つが、休憩時間中の業務である。文部科学省の定めでは、「『在校等時間』には、実際に休憩した分の時間を含まない」(「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針に係るQ&A(令和3年6月時点)」)、すなわち、所定の休憩時間であっても業務に従事した場合にはそれを在校等時間としてカウントする。ところが、45分の休憩時間全体が、誤って、在校等時間から丸ごと差し引かれるケースが報告されている。明白な教育活動にたずさわっていながらも、時間数としてカウントされていない可能性がある。
また上記に関連する根本的な問題として、これまで長らく時間管理が希薄であったことにより、時間管理が始まったとしても、あるいは時間管理にともなって上限規制が適用されるがゆえにこそ、定時外の仕事をはじめとするさまざまな業務が、正式には記録・申告されない可能性が生じうる。みずから過少申告したり、管理職が教員にそのように依頼したりすることさえ想定される。
以上、①持ち帰り仕事の時間数、②休憩時間中に働いた時間、③過少申告により削られた時間が、改正給特法の下で新たに開始された「在校等時間」の管理において生じうる「見えない残業時間」である。