EDM、ボカロ、抽象的な歌詞……映像制作の難易度は上がっている
––ラブソングなら「男女が出てきて、ケンカして、和解」など、比較的脚本が考えやすそうですが、その他のジャンルはどうなのでしょう?
それが目下、最大の悩みですね。今、カラオケ機器に入る「楽曲のジャンル」が増えているんですよ。新ジャンルが出てくるたびに、「これに合う映像って何だろう……?」と頭を悩ませています。
たとえば、EDMの背景で「歩道橋で男女が言い合いをしている」みたいなよくあるカラオケの映像が流れたら、ちょっと違和感ありますよね。
––たしかに。EDMはどういった背景映像が合うんでしょうか……?
今のところは、クラブの映像を撮影して流しています。新しい音楽ジャンルの映像は正解がないので、難しいですね。
––以前は存在しなかったり、メジャーでなかったりしたボーカロイドやK-POPなどのジャンルが、今は人気ありますもんね。
ひと口にボーカロイドといっても、音楽ジャンルでいえばポップスやロック、バラード……歌詞の内容もそれぞれ違います。それに合った映像はどういうものなのか、一から企画会議をして考えています。
歌詞も、ひと昔前の曲はもっとわかりやすかったんですよ。「失恋ソング」だったり、「応援ソング」だったり。でも最近の曲は抽象的で掴みどころがない曲も多いですよね。これは単に私が歳を取ってついていけていないだけかもしれないのですが(笑)。ただ、歌詞のワードや曲のタイトルは楽曲の大きな要素ですので、そこからなんとか絞り込んで映像を作っています。
––最近では、「本人映像」として、ミュージックビデオやライブ映像が流れる楽曲も増えましたよね。それによって、制作する背景映像の本数は少なくなっているのでしょうか。
それが、逆なんです。たしかに、本人映像に歌詞テロップをつけるものも増えています。でも、それ以上にジャンルの細分化が進んでいるため、背景映像も増えているんです。
1990年代くらいまでは、国民的な大ヒット曲があって、それをみんなが歌うのがカラオケの定番でした。それ以前なんて、カラオケで歌われる曲はもっと少なかったんです。
今は、各々に好きなジャンル、好きな曲があって、歌われる曲が非常に多様化していますよね。それによって、我々の映像の供給も増えているんです。
––今後はどんな背景映像が増えていくのでしょうか。
挑戦していきたいのはCGですね。これまでCG制作はすごく大変で、あまり作れなかったんです。だんだんと技術が発展し、手軽に作れるようになってきたので、アニソンなどに合わせてもっと作っていけたらいいなと思っています。
取材・文/崎谷実穂