背景映像のストーリーが脈絡なく見える理由

––そもそもカラオケの背景映像って、いつ頃から存在しているんですか?

カラオケは1970年頃に伴奏を録音したテープから始まっています。そのときは歌詞が書かれた本を見ながら歌うというスタイルで、背景映像はありませんでした。

その後1980年代はじめに登場した「レーザーディスクカラオケ」で初めて背景画像や歌詞のテロップが流れるようになり、画面を見ながら歌えるようになったんです。

そして1992年には、当社の創業とともに、「通信カラオケ」が登場します。当時はISDNという回線があり、それで楽曲データを送るようになったんです。でも、映像はISDN回線では送れませんでした。

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1992年に登場した「通信カラオケ」。当時はISDN回線で楽曲データを送っていた(写真提供:株式会社エクシング)

––動画ファイルは容量が大きいからですか?

そうなんです。そこで、ハードディスクに映像を入れておき、そこから自動的にピックアップした映像を音楽と同時に流すという方法で背景映像をつけていました。

––その頃からすでに、楽曲の雰囲気に合わせた背景映像が流れるようになっていたんですか?

ハードディスクには数十時間分の映像が入っていたので、そのなかで「ポップス」「演歌」など約20ジャンルほどに分けて、楽曲と紐づけていました。ジャンル内でいくつかの映像を用意していましたが、通信カラオケの楽曲数は最初から3000曲ほどあったので、曲数と比較すると映像数は少ない。なので、同じ映像が流れてしまうことがありました。

––最近の背景映像も、ジャンルに分けて楽曲に紐づけされているのでしょうか。

今は曲のジャンルだけでなく、もっと細分化されています。たとえば「J-POPのラブソング」であれば、女性目線、男性目線、年齢層、季節感…といった部分まで分けて紐づけしています。

––それだと、「男性目線の失恋の秋の歌」ばかり歌う人は、同じ背景映像を見る可能性がある……?

「男性目線の失恋の秋の歌」がどれだけあるかはわかりませんが(笑)、今は同じ映像は流れづらくなっています。通信技術が進化して、映像データも配信できるようになったんです。それにより、映像をハイペースで増やしていけるようになりました。

今はカラオケボックスで同じ曲を12〜14回くらい歌い続けても、原則として同じ映像が出てこない仕組みになっています。

––そもそもカラオケ映像というのは、どのように作られているのでしょうか。

まず楽曲のジャンルに合った映像はどういうものか企画会議をして、脚本を書き、ロケハンをして、撮影をするという流れです。

––脚本がしっかり用意されているんですね。シーンごとに映像を撮って、脈絡なく繋いでいるのかと思っていました。

実は、カラオケ映像にはかなり明確な“流れ”があるんです。一応、4〜5分の1本でストーリーになるように撮影・編集しています。ただ、曲の長さによって全編流れるわけではないですし、サビに合わせて映像が飛んだりするので、脈絡なく見えることがあるかもしれません。

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背景映像は脚本を用意したうえで撮影される。“鉄板”の撮影場所もいくつかあるそうだ(写真提供:株式会社エクシング)