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パワハラ被害者は40代男性が圧倒的に多い

日本労働組合総連合会(連合)が実施した調査で、パワハラ被害者は圧倒的に40代男性が多く(42・4%)、次いで30代女性と50代女性(35・2%)だったことがわかりました(「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」より)。

上司・部下という構図から「パワハラ被害者=若手社員」をイメージしがちですが、実際には40代のベテラン社員が主たる被害者です。

パワハラの内容については、4割以上が「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃」で、パワハラの行為者は、「上司」が77・5%と圧倒的に多く、「先輩」33・3%、「同僚」23・6%、「後輩」7・2%と続いています。

おそらく若い社員には「パワハラになるかも」と躊躇しても、40代なら「これくらい言ってもいいだろう」と思っている上司が多いのでしょう。実際、私の周りの「パワハラに遭った知人」もすべて40代。職場で、みんなの前で、日常的に上司に暴言を吐かれ、孤軍奮闘を余儀なくされていました。

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40代男性が受けたパワハラ実例…
【証言8大手銀行勤務のユウキさん(仮名)40代後半】

「まるで見せしめでした。部下たちがいる前で、毎朝怒鳴られる。最初のうちは、自分をスケープゴートにして、若い社員たちに活を入れているんだろうと思ったので、頭には来るけど、さほど深刻に考えませんでした。ところが、だんだんとエスカレートしていった。人間って、一度でも『バカ』とか相手を冒涜する言葉を使うとたががはずれるんです。『飛ばすぞ!』とまで言われましたから。

部下がハラスメントされるくらいならと、必死で正気を保とうと努力しましたけど、もう無理でした。あんなふうに部下の前で罵倒され続けたら、部下を指導することもできません。だから、部下の後始末を自分でこっそりやったりしてね。そうしているうちに上司の前に行くと、震えが出るようになってしまったんです。

おそらく私の変化に周りも気づいたのでしょう。同僚から、『お互いうまくやろうぜ』と言われてしまった。ヤツは励ましたつもりだったのかもしれません。でも、ああ、やっぱり自分がダメなんだと、自分が嫌になりました。『もう、無理。このままだと潰される』と思って、異動願を出しました。

管理職が自ら異動を願い出るということは、昇進拒否です。悔しいけど、そうするしかなかった。とにかくあのときは限界でした」

ユウキさん(仮名)は厳しい就職戦線を乗り越え大手銀行に就職。封建的な空気が残るその職場で、最後の最後まで耐えました。同期にも、先輩にも、後輩にも、会社にも相談しませんでした。「そんなことをしても無駄。立場が悪くなるだけ」と考えた。いや、そう思わせる空気を職場で感じたのです。

お互いうまくやろうぜ──。同僚は一体、どういう意味でこの一言をかけたのでしょうか?

「おまえも大変そうだけど、オレたちも大変なんだよ」と、自分たちも同じようにパワハラを受けていると言いたかったのでしょうか?

あるいは、「おまえのやり方にも問題があるから、もう少しちゃんとやれよ」と、暗に彼にも問題がある、と言いたかったのでしょうか?

真相はわかりません。しかし、ひとつだけ確かなのは、〝傍観者〟である同僚もまた、「パワハラに結果的に手を貸している」という、歴然たる事実です。