アルゼンチンでの上映3回分のチケットが完売
自身の海外上映デビューがアルゼンチンと聞いたとき、昨年のW杯で優勝したメッシ選手たちの凱旋に熱狂する民衆が大通りを埋め尽くす映像が浮かびました。ブエノスアイレスにあるその片側8車線の「7月9日大通り」は、スペイン領だったアルゼンチンが1816年7月9日に独立を果たした日付が名前になって、世界で最も幅の広い道路なのだそうです。
BAFICI (ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭)1回目の上映は4月25日18時。その4時間前に映写のテクニカルチェックで通訳のリナさんと初めて対面しました。熊本出身の日系2世で二児の母。膨大な作品が届く事務局からの連絡不備だったのか、リナさんの元には『教育と愛国』の資料が届いていませんでした。
ぶっつけ本番の通訳に不安そうな表情でしたが、私がいっきに映画の内容や背景を関西弁でしゃべりだすと、負けじと熊本弁でアルゼンチンの学校事情を交えつつ応答してくれます。西日本特有の平板な語尾が心地よく、お互いすぐに打ち解けました。
リナさんは私たちが準備したスペイン語のチラシを読み「論文みたいで硬い感じ」と述べたのですが、映画を見るたびに印象が変わり、最終日には「3回観て、やっと深く理解できました」と言ってくれました。
日本を出発する前、『教育と愛国』の上映チケット3回分が完売したと聞いて「ウソでしょ」と呟いたのですが、開演前にほぼ満席になりました。
初日、映画祭の代表であるハビエル・ポンテ・フォウスが挨拶に立ち「当初は誰もが日本の教科書を扱う地味な作品と思ったが、本編を見た後は普遍的テーマだとわかり、全員一致で国際コンペ部門に推奨した」と経緯説明があって、上映が始まりました。