1980年代からあのちゃんに受け継がれた
パンク&ニューウェーブ精神

江戸の歌舞伎役者と贔屓筋の例を挙げるまでもなく、特定のエンターテイナーを夢中で応援する行為は古来から普遍で、人の世では必然的に発生する摂理のようなものだ。
だから僕は、偶像を夢中で追っかける人に対して何も思わないが、自分自身はどうなのかというと、若い頃から今まで、いわゆるアイドルと呼ばれる人たちに強く入れ込んだことはなかった。

昔、小泉今日子がお気に入りだったこともあったが、それも入れ込み度は低かった。
周りの友達はみんな推しのアイドルの一人や二人いて、「お前は誰が好きなの?」と聞かれることもあったので、「だったらキョンキョンかな」という自分なりの回答をあらかじめ準備していた、という方が本音に近い。

その代わり、と言うべきなのかはさておき、そんな僕にも若い頃から夢中になって追いかけていたエンターテイナーたちがいた。
中高生だった1980年代、大多数の人から“ちょっとキワモノ”として扱われるアーティストに、僕はのめり込んでいたのだ。

当時はちょうどニューウェーヴ全盛期で、世界的にハードコアパンクやポストパンク、テクノポップ、ニューロマンティック、ゴスなどが流行していた。
日本でもインディーズブームが巻き起こり、そうしたジャンルにくくられるトンがったアーティストが、全国のアンダーグラウンドから雨後の筍のごとく出現した。
僕はブームだった当時からいま現在までずっと、そんなアーティストを追い求め続けているのだ。

翻り、あのちゃんがかつて在籍していた、ゆるめるモ!のことだが、僕はあのちゃんから目が離せなくなってから、後追いでチェックしてみた。
フリーライターの田家大知が、後ろ盾も知識もない真っさらな状態から、街頭スカウトで集めたメンバーによってはじめた、真の“インディーズ系”グループで、コンセプトはなんと、“ニューウェーヴガールズグループ”。
ゆるめるモ!の楽曲から音源のジャケットデザイン、メンバーの衣装に至るまで、内外のニューウェーブやオルタナ系ミュージシャンをオマージュしたエッセンスが盛り込まれている。

あのちゃんが在籍していた2017年6月にリリースされたゆるめるモ!のミニアルバム『ディスコサイケデリア』。ジャケットのデザインはどうみてもプライマル・スクリームだ
あのちゃんが在籍していた2017年6月にリリースされたゆるめるモ!のミニアルバム『ディスコサイケデリア』。ジャケットのデザインはどうみてもプライマル・スクリームだ
同じくあのちゃんが在籍時の2017年10月にリリースされたゆるめるモ!の結成5周年記念シングル『TALIKNG HITS』。ジャケットデザインは言わずもがなトーキング・ヘッズへのオマージュだ
同じくあのちゃんが在籍時の2017年10月にリリースされたゆるめるモ!の結成5周年記念シングル『TALIKNG HITS』。ジャケットデザインは言わずもがなトーキング・ヘッズへのオマージュだ

つまり、僕がまったく意識していなかったアイドル活動時から、あのちゃんは僕の好きな系統のエンタメを提供していたことは間違いなく、寡聞にして存じ上げなかったことは、甚だお恥ずかしいというしかない(なんて、本当は全然そんな大仰には考えていないんだけど)。

動画サイトにまとめられている、ゆるめるモ!時代のテレビ出演時の様子を見ると、あのちゃんは今と変わらぬ独特のしゃべり方で、アイドルとは思えぬ鋭いコメントや際どい発言を繰り出している。

スタジオでライブを再現するように振られると、のんびりした通常の態度から豹変して絶叫し、走りまくりながら歌い叫び、ゲスト陣の上に体を投げ出して転がったりしている。
ゆるめるモ!のライブでも、シャウトや客席へのダイブ、クラウドサーフィンなどのパンクっぽいパフォーマンスは、ゆるめるモ!及びあのちゃんの得意技だったらしい。

いやあ、やっぱ深いな、アイドルの世界は。