変わらない“教育ムラ”のルール

岡山市の朝日学園グループは2つの学校法人の下に幼稚園、小学校、中等教育学校、通信制高校を擁する新興校だ。烏海十児学園長が一代でゼロから築いた。

学校法人が2つあるのはわけがある。中等教育学校の前身である中学校を04年に開校する際に学校法人の設立を目指し岡山県と事前協議したが、審議会で認可の見通しが立たず、特区を使った株式会社立で発足したからだ。

発足後に学校法人に転換することができたが、当時を振り返って鳥海氏は、「中高は競合校が多く、新規参入には既存校の反対があった」と語る。「学校は責任が重く、ある程度の参入制限も必要だが、意欲のない既存校は新しい人に経営権を譲るなど新陳代謝を進めた方が社会のためだ」と指摘する。

構造改革特区による株式会社立学校は、安易な事業計画が相次ぎ粗製乱造気味に陥ったこともあり、廃校や学校法人転換が進み、今は熱気はすっかり冷え切っている。

だが、経済社会が激動する時代に、いつまでも“ムラ”のルールにこだわり、変革を認めない学校制度で本当によいのだろうか。教育の特質を考えれば、質を保証する最低限の仕組みは必要だ。しかし、それを盾にして新しい血を導入する努力を怠っているようでは日本の教育に未来はない。

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『「低学歴国」ニッポン』
日本経済新聞社
2023年5月9日
990円
B40判/216ページ
ISBN:978-4296117376
大学教育が普及し、教育水準が高い「教育大国」――そんなニッポン像はもはや幻想?
日本の博士号取得者数は他先進国を大きく下回り、英語力やデジタル競争力の世界ランキングでも年々遅れをとっている。      

とがった能力の子をふるい落とし、平均点の高い優等生ばかり選抜する難関大入試。世界の主流とずれる4月入学。理解が早い子にも遅い子にも苦痛なだけの「履修主義」指導……。

岩盤のように変化を忌避する学校教育はいま、私たちの未来をも危うくしている。   
世界をけん引する人材を輩出するには、「何」を変えればいいのか。教育の今をルポし、わが国が抱える構造的な問題をあぶり出す。

【目次】
はじめに 日本人の「低学歴」化を見つめる
第1章 変わらない日本の「学校」
第2章 いびつな日本の「学歴」問題
第3章 二極化する「入試」、形骸化する「偏差値」
第4章 「学校崩壊」避けるためにできること 
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