いつ死ぬかわからないから、シンプルに

——デジタル終活は少々煩雑なイメージもありましたが、実は至ってシンプルなんですね。

もちろんベストなのは、自分がどういうツールやサービスを使っていて、担当窓口が誰で、ID・パスワードがどうなっているか、といった情報をきちんとノートなどで残しておいて、「もし自分が死んだら解約して」としっかり家族に伝えておくことです。

しかし夏休みの宿題と一緒で、締め切りギリギリまでやらない人(かつての私もそうでしたが)は、何を言ってもやりません。終活の場合は「いつ終わりがくるのかがわからない」という点が、少々厄介なのです。明日死なないのに、今日やる必要はない、と考える人は多いのが実情といえるでしょう。

作業としては30分くらいで終わることであっても、「自分が死ぬ」ということを考えなくてはいけないので、ついつい先送りしてしまいがちです。しかも、本人にとっては先送りしても困らないですからね。

——先送りにしがちだからこそ、シンプルな手段を薦める、と。

はい。なので、私としては「スマホやPC、各種サービスのパスワードをすべてノートに羅列して…」といったことをやってもらおうとは考えていません。とにかく、スマホだけでも構わないのでログインパスワードを残しておくこと。まずは、それだけでいい。これだけやっておけば、デジタル終活はほぼ完了です。これなら1分で終わります。

そのうえで、もし「もっときっちりと残しておきたい」と思ったならば、エンディングノートを作成したり、遺族とあらかじめ話し合ったりと、本格的にやっていただければよいのです。

【死んだ後にスマホの中身は見られたくない…】プライバシーは守れて、遺族に迷惑はかけない、“1分で終わる”賢いデジタル終活術_4
伊勢田さんの著書『デジタル遺品の探しかた しまいかた 残しかた+隠しかた』(日本加除出版 刊)
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文/井上晃