中国が輸入したプラスチックが海洋流出
では、どの国が世界平均の数字を押し上げているのか。これはもう、明らかに中国です。世界全体で800万トンと推定される2010年の海洋流出量のうち、中国が占める量は132万〜353万トン。2位のインドネシアが48万〜129万トンですから、圧倒的なワースト1位です。日本や米国とは、二桁違います。
中国は人口が多いので、ゴミの量も多くなるのはわからなくもありません。でも、二番目に人口の多いインドでも流出量は10万〜20万トン程度。中国からの流出量は、人口の多さだけでは説明がつきません。これだけの廃プラスチックが流出したのは、中国がそれを外国から大量に輸入していたからです。
30年ほど前から、中国はヨーロッパ、米国、日本などから廃プラスチックを輸入していました。石油から自前でプラスチック製品を生産するより、輸入した廃プラスチックをリサイクルしたほうが生産コストを抑えられたからです。
ところが、それがうまく管理されずに流出してしまった。森の中の川をペットボトルなど大量のゴミが流れていく動画を見たことがありますが、あれはおそらく輸入した廃プラスチックを山積みにしていたのが崩れてしまったのでしょう。そうでもなければ、森の奥にあんなにたくさんのゴミがあるはずがありません。
いずれにしろ、海洋流出問題は、廃プラスチックを中国に輸出した国々にも責任があるでしょう。まずは中国がしっかり管理してしっかりリサイクルすべきだったのはもちろんですが、自分たちで処理しきれないゴミをよそに押しつけていた側にも、やはり問題はあります。
ちなみに中国は、経済成長によって余裕が生まれたこともあって、2017年12月から廃プラスチックをリサイクル原料として輸入するのをやめました。国連事務総長が「脱プラスチック」を提案し、欧州議会が使い捨てプラスチック製品を2021年から禁止することを決めた前年のことです。
その背景には、もう中国にプラゴミを押しつけられなくなったという事情もあるのではないでしょうか。「ウミガメをストローから守りたい」といった心やさしい理由だけで脱プラスチックを言い出したのではないと思います。
ここでヨーロッパ諸国が不思議なのは、中国に輸出できなくなった廃プラスチックを焼却しようとは考えないこと。2018年5月には「欧州は、これまで中国に送っていたプラスチック廃棄物の半分強を、他のアジア諸国に送り出した」というロイターの報道がありました。
その記事によると「行き場のない廃プラスチックの一部は、建設現場から港に至るまで、さまざまな場所に積み上げられ、新たなリサイクル市場が生まれるのを待っているという」とのこと。そんな状態では、やがて海に流出するおそれもあります。