海なる母たるグランマンマーレはアンコウだった
ポニョの母であり、フジモトの妻である、海なる母たるグランマンマーレの描写なんて、宮崎駿が好き放題自分の描きたいものを詰め込んだ、最たる例だと思います。実は宮崎駿が正体を明かしています。公開当時の雑誌で語っていたその答えは、現在は『続・風の帰る場所』というインタビュー集で確認できます。
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異種婚礼っていうのは日本には数々あるからね。あのお母さんだって本当は巨大なアンコウなんだとかね。そういうことは、スタッフの中で話してたんですよ。でも差し渡し1キロのアンコウが出てきても画面の中にどう入れていいかわかんないから(笑)、ちゃんと人間の姿を取ることもできて、その代わり大きさは自由自在っていう。要するに孫悟空の世界ですね。孫悟空の中に、天界にいた金魚が3日間ほど地上に逃げて、化けものになって暴れるっていう話があるんですよ。それが地上では3年間だったとか。最後は観音様だったかに連れていかれちゃうんですけど(笑)。
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※宮崎駿『続・風の帰る場所』ロッキング・オン
まさにグランマンマーレは観音様であるわけです。もっとも、最終的にはポニョを人間にして陸に残すことに決めるのですが......。
それよりもっとおもしろい証言として、グランマンマーレの正体はアンコウだと言っています。異種婚礼というのは、違う生き物同士が結婚することで、確かにそういった話は日本には多くあります。一番有名なのは『鶴女房』ですかね。昔話として今よく知られている鶴の恩返しはおじいさん、おばあさんと鶴の物語ですが、そうではなくて若い男と鶴が結婚するバージョンの鶴の恩返しがあるのです。
アンコウと人間の異種婚礼という宮崎駿のマニアック
ポニョも異種婚礼によって生まれた子であり、父が人間のフジモト、母の正体はアンコウというわけです。グランマンマーレを母なる海としてしか認識していないと、なぜポニョが「さかなの子」として生まれているのか不思議ですが、アンコウなら確かに一応魚の血が入っているということになります。
それでもアンコウとポニョでは、同じ魚でも全然イメージが違いますが......。ポニョが金魚の見た目をしているのは、孫悟空の元ネタからの影響でしょうか。
ともあれ、グランマンマーレの正体はアンコウということで決着です。光り輝くアンコウ。さながらチョウチンアンコウといったところでしょうか。
アンコウと人間の異種婚礼なんて、宮崎駿もかなりマニアックですね。ただこの設定、実にうまくできています。たとえば、アンコウはメスが巨大で、オスは本当に小柄。メスの数十分の一といったところでしょうか。グランマンマーレとフジモトのサイズ感の極端な違いに合っています。