自称エリートたちが引き起こす「負の連鎖」
――新聞記者が記者を辞めたあとに就きたい、一番憧れの職業を知ってますか? みんな大学教授になりたいんです。記者を辞めて大学教授になるのが、一番のステータスだと思ってるの。だけど、ステータスを求めて新聞記者をやっていることが、そもそも大間違い。そういう記者が庶民目線で権力者を追及できるはずがない。
泉さんの「10歳から明石市長になりたい」のように、強い思いを持って働いている人が新聞業界にほとんどいない。官僚や外交官、政治家、弁護士、学者。どれになってもよかったけれど、試験の成績が足りなくて新聞社に入ったという人たちが、いまの会社の中枢にいる。それが新聞社の大問題だと私は思います。
泉 いっぱい言いたいことがあるんですが、結論からいうと、財務省の官僚がいちばん害悪なんですよ。作業能力がいちばん高い人が財務省に行く。すると、厚労省とか他の役所の人間は財務省に引け目を感じてしまっている。記者もそうだという話ですけど、それこそ、どこも引け目だらけなんです。
私に言わせてもらえば、財務省の上のほうの人間はそんなに賢くもないし、全く政治がわかってない。わかっていない人がわかったフリをして進めるから、おかしなことがボコボコ起きる。彼らは、「自分たちがいちばん頭が良いんだから、自分たちの判断がいちばん正しい。その自分たちが考えるに、これ以上は増税しないと無理です」と言いますよね。でも、それ単なる思い込みですから。
にもかかわらず、厚労省は財務省に引け目を感じてケンカを売らない。だから厚労省は税金ではなく保険制度で何とかしようとする。介護保険もこども保険もそう。何でもかんでも保険を作る。それにまとわりついている社会保障系の学者、ジャーナリストは厚労省の言い分を垂れ流す。「こども予算を作るためには、こども保険が要る!」とか言ってね。
そんなものまったく要りませんよ。保険を作るヒマがあったら「財務省と掛け合って財源確保しろよ」という話なんだけど、彼らは財務省にビビってるから言えない。財務省に掛け合うことなく金を作るためには、保険しかない。
繰り返しになりますが、財務省には「金握っとんのやから、やりくりしたらええやないか」と言いたいし、厚労省には「保険増やしても税金は下がらないんだから、国民負担増えるだけやん」と言いたい。
財務省と厚労省が、馬鹿の一つ覚えで、競うように税と保険を取りまくったから、5割近くまで国民負担が上がっているのに、国民に全然恩恵が戻ってきてないでしょ? 本当に間違ってるんですよ。だけど、間違っていることを新聞記者は報道しない。記者もわかったフリして、垂れ流すだけ。
――わかったフリの連鎖は、財務省から始まり、ズルズル降りてきているというのは非常に興味深い見方だし、その通りだと思います。