雑誌の「衝動買い」への期待感
「セブン-イレブン」の最年少取締役にもなった本田利範氏は「私は『コンビニは新商品を置く店である』とよく言っています。実際、コンビニには毎週何かしらの新商品が登場しています。すでに好評な商品も常にリニューアルしているため、年間で約7割の商品が入れ替わっていることがあります」(『売れる化』本田利範著/プレジデント社)と指摘している。
スーパーでは日本で一番のシェアを誇る「スーパードライ」が最も売れているが、コンビニでは「スーパーでは手に入らない、サントリーが○○(コンビニ名)のためだけに独自開発したビール」とうたった商品が爆発的に売れているのだ。コンビニに求められているのは「何か変わった商品が出ていないかな」という期待感でもある。実は、毎号話題が変わる雑誌は「常に新商品」という性質を持つ。新聞とは違い、定期購読の割合が極端に低いからだ。つまり、読者はその号の特集によって、買ったり買わなかったりする商品に位置している。毎号、出版社が話題のトレンドを捉えて、読者の「衝動買い」を誘うという狙いに満ちた商品だ。
このコンビニへの「期待感」と「話題が変わる雑誌」は、非常にマッチした。単身世代がフラっとコンビニに立ち寄り、「面白い雑誌ないかな」と探す限り、雑誌の売上は低くとも、雑誌コーナーは販売上の意味を持っていると考えるコンビニオーナーはまだ残っているのだ。
雑誌に求められていた衝動読みがネットニュースに代替
セブン-イレブンが2017年に店舗の新レイアウトに着手した。1日1店舗あたり3万円から5万円の売上アップになった大改革だった。2017年というと、2006年と比較して雑誌の売上が58%減となり、コンビニの売上に占める雑誌の割合が(今とほぼ変わらない)1%程度しかなくなっている状態の時である。
その時でも「雑誌コーナー」は残っていた。セブン-イレブンにとって売上の高いタバコと、雑誌は客を呼び込むと考えられているのだろう。
コンビニの雑誌コーナーが続いているとはいえ、危機が去ったわけではもちろんない。雑誌売上の低迷ぶりは、その雑誌に求められていた「衝動読み」がネットニュースに変わりつつあることを意味する。何か面白い話題はないか、と人が考える時にコンビニよりも身近なスマホを手に取るのだ。