日本政府の対応は「稼げないなら出て行け」

2人の場合、両親からの援助やクラウドファンディングによる応援を受け、なんとか合同会社設立にはこぎつけたが、来期の会社の業績が芳しくなければアンナさんのビザは更新されない可能性もある。一年経ったらまた次の一年と、毎年肝を冷やしながらビザの更新を迎えることになる。
今はとにかく目の前の売上を伸ばすことに必死だ。
日本政府の外国人への対応は端的にいうと「稼げないなら出て行け」ということだ。

これほど手を尽くしても、日本滞在が難しいとなったら、今度こそ2人は国を捨てざるを得ないだろう。
ヘテロカップル(異性間カップル)が婚姻届を提出するだけで配偶者ビザが下りると考えると、リョウさんが不公平だと言うのも無理はない。

現在、アンナさんは陶芸家として作品作り、ショップ運営、マーケット出店などに励むかたたわら、スペイン語・英語・日本語・カタルーニャ語を使った陶芸教室に加えて語学教室を運営している。
後日工房を訪れると、スペイン語と英語で、カタルーニャの伝統的なモザイクアート制作のワークショップを開催していた。生徒は外国語教育に興味のある日本人の母親3人とその子供たち。英語で受けられるアクティビティーは増えているが、スペイン語で陶芸のレッスンを受けられるとあって、評判を呼んでいる。

「来日当初は日本で陶芸がしたいという個人的な想いでしたが、今はこの工房が国籍、性別、年齢問わずいろいろな人が集まる場所になって、1人でも多くの人に自分だけの作品を作る喜びを感じてもらえたら幸せです」

「片方が外国人」の同性カップルは日本から出ていけということ? 金銭的不利益、ビザ、親権…世界の常識からかけ離れた冷遇ぶりの実態_3
生野区の古民家を改装して作ったアトリエの土間に、電気釜を設置

工房を生野区に構えたのは、ここがマイノリティーの方々にとって歴史がある場所だと知ったから。近所には50年近くここに住み続けている在日コリアンのおばあちゃんや、ニューカマーの10代のベトナム人留学生も暮らしている。

「自分はマイノリティーの中のマイノリティー」

日本と日本文化を愛し、日本人のパートナーがいるアンナさんを日本に居させない理由がどこにあるのだろう。
前述の荒井元秘書官を更迭した岸田文雄首相は、同性婚導入について「家族観や価値観、社会のあり方が変わる」と言った。
最新の共同通信による世論調査によると、同性婚に賛成する人は64%。今、求められている「家族のあり方」は果たして、現政権が定義しているようなものなのだろうか。
このままでは国を捨てざるを得ない人たちが少なくないだろう。
同性婚の議論が1日でも早く進むことを願う。

「片方が外国人」の同性カップルは日本から出ていけということ? 金銭的不利益、ビザ、親権…世界の常識からかけ離れた冷遇ぶりの実態_4
陶芸を通して、日本とカタルーニャの架け橋になりたいと願うアンナさん
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取材・文/福田優美